富士通の「やわらかデザイン」に学ぶDX時代の企業風土改革【後編】
こんにちは、「みんなのデザイン思考とアジャイル」運営チームです。
私たちは「リコーアジャイル」を全社に浸透させるため、デザイン思考やアジャイルの学習&実践の場として、セミナーやワークショップイベントを定期的に開催しています。
今回は、「先駆者に学ぶ企業風土変革 富士通のDXを支える「やわらかデザイン」~リコーアジャイルとの共通点とは~」というイベントを開催しました。
富士通株式会社の「やわらかデザイン」発起人の加藤正義さんと、社員同士がフラットに本音で話せる場「スナックまり」を立ち上げた日水真理さんのお二人をゲストにお迎えし、講演とトークセッションをお届けしました。
この記事ではイベントレポート後編として、富士通×リコーグループによるトークセッションをお届けします。ゲストのお2人とリコーグループのメンバーを交えた4名で、コミュニティの立ち上げや運営に取り組む皆さんそれぞれの考えや想いなどをお話しいただきました。
▼イベントレポート前篇はこちら
富士通の「やわらかデザイン」の取り組みについて、ゲストのお二人に講演いただいた内容をご紹介しています。
このトークセッションではコミュニティの拡大に繋がった要因をはじめ、コミュニティが組織にどのように貢献するのかなど様々なテーマについて語っていただきました。組織作りやコミュニティ運営のアイデアをたくさんお聞きできましたので、ぜひ参考にしていただけると嬉しいです。
登壇者
⚫︎富士通株式会社
加藤正義さん
みんなで富士通グループを「やわらかく」「面白く」する実験・実践コミュニティ「やわらかデザイン」の発起人。
日水真理さん
社員同士が組織の垣根なく本音で語り合えるオンラインスナック「スナックまり」を立ち上げ、最近ではオフラインの場「スナックまりPremium」も運営する。
⚫︎リコーグループ
吉村枝里子さん(リコージャパン株式会社)
社員が自発的にイキイキと働くことができる社内風土を作るため、社内にある多様な課題に対し解決策のアイデアを実現するチーム「LCA」(Lively Challenge Activity)の活動で「となりのこせいラジオ」を発信中。
武田修一さん(株式会社リコー)
「リコーを芯からアジャイルにするTF(タスクフォース)」に所属し、デザイン思考とアジャイルを使った組織風土変革の社内普及活動を推進している。
コミュニティを広げるためには、ネーミングや楽しい雰囲気作りが重要
まずひとつ目のトークテーマとして、現在それぞれのコミュニティを運営する登壇者4名に、コミュニティが拡大した理由や要因について、ご自身の考えをお話しいただきました。
加藤さん:戦略的にやってきた様々な要因が絡み合って拡大してきたので特定するのは難しいのですが、一つ挙げるとすれば「やわらかデザイン」というネーミングの秀逸さはあると思います。自ら考えたものを褒めるのも恐縮ですが(笑)「やわデザ」の愛称で皆さんに呼んでもらえるようになり、一気に広まっていった感覚がありました。
また、「やわらかチャット」や「やわらかセッション」など活動も全て統一して「やわらか」ブランディングを行ったことも、コミュニティの名前と同時に活動内容も広まる要因になったと思っています。覚えやすく潜在的なニーズに訴えかける何かがあったのかなと。
さらにコミュニティを広めていくためには人数の多さではなく想いの濃い人が必要で、活動を広めていってくれる約一割のコアの層をどうやって作っていくかが大事だと思います。
日水さん:私も同じくネーミングはすごく大事だと思います。例えば、「Barまり」ではなく「スナックまり」であるからこその意外性や面白さが拡大に繋がったのかなと思っています。参加者の方がスケジュールに「スナックまり」と入れて下さっていて、そこからその周囲の方々が興味を持ってくださることもありました。
また、もう一つの要因としては役員の方のサポートも大きかったです。富士通グループの全役員会議で、CIOが「最近こんな活動をしている人がいる」と私のことをお話ししてくださって。「役員会議のような場で、一社員の個人名が取り上げられたことなんてこれまでなかったではないか」と、当時の上司からも言われました。
スナックまりの取り組みの中で特に大切にしているのが、個人起点。誰かに言われてやっているのではなく、自分の想いややりたいことを軸に行動に起こしているところに共感してくださった方が多く、広まっていったのではないかと思っています。
さらに、コミュニティを継続していくにあたってはコアなファンやサポートをしてくださる方々の存在が欠かせないと思います。3割強は常連の方なんですが、その方々が口コミで広めてくださったことが大きな後押しになりました。
吉村さん:お話を聞いていて、ネーミングはもちろん、お二人のような強い想いのある推進者、キーマン的な役割の方がいるコミュニティは広まっていきやすいのかなと思いました。お二人ともついていきたくなるお人柄ですよね。あとは「楽しい」「面白そう」と興味をそそるようなポジティブな感情に働きかけるコンセプトは拡大のうえで重要なのかなと思います。
武田さん:一般的なコミュニティって、特定の技術に関するものなど「特定用途向け」のものが多いと思うんですよね。これらはもちろん目の前の仕事に役に立つものではありますが、「やわデザ」のような文化・風土を変化させるコミュニティを作っていくためには、まずはひたすらに楽しむことを目的にするのもいいなと感じました。
「楽しさ」を起点にコミュニティを広げていった上で、徐々に本題のテーマに取り組んでいくという戦略性も必要ですし、そもそも楽しそうにしている人がいるからこそ人が集まってくるんだなと。このような雰囲気づくりはみんデジャでも今後のテーマにしていきたいです。
コミュニティの立ち上げや運営で得られた多くの変化
次に、コミュニティの立ち上げや運営に関わることで自身や周囲、組織・会社に起きた変化について伺いました。
加藤さん:色々ありますが、大きな変化としてはチャットのリアクションです。以前は気恥ずかしさもありあまり使っていなかったハートマークを、基本的にはどんな投稿に対しても押せるようになったことです(笑)。
コミュニティづくりにチャレンジする中で、ある時、ハートマークを押されると嬉しいことに気づき、それから「投稿に対するお礼」くらいの気持ちでハートマークを押すように行動を変えていきました。、「メンバーが嬉しいことをやった方がいい」というマインドで抵抗感を取り払って行動ができるようになりましたね。
日水さん:私は会社に居場所が感じられなかった状況から、活動を通して会社の人をもっと好きになりましたし、仕事に対する姿勢もポジティブに変化しました。行動を起こしてそれが広がっていくことで自信につながり、さらに新しいチャレンジができるようになりましたし、営業から企画の仕事にもチャレンジしてみたりなど本業にもいい影響がありました。
会社や組織に起きた変化としては「まりさんの姿をみて自分もやってみたくて」とチャレンジしたことの報告をいただけることが増えました。自分の取り組みが周りの方々に影響を与え、新たなチャレンジへと循環が生まれていったことがすごく嬉しかったですね。
吉村さん:私は以前は「自分がやらねば」とひとりで頑張ってしまうことが多かったのですが、コミュニティを通して「頼っていいんだ」という気持ちになれましたし、協力の得方も学べたと思っています。また、発信を続けるうちに人を紹介していただけることが増えてきて、新しい出会いも増えてきました。
武田さん:みんデジャは影響としては会社全体からするとまだまだ微風ではありますが、認知は広めてこれたかなと思っています。
「変わってもいいんだ」っていうポジティブなメッセージを送り続けることが重要で、それが組織全体の変化にボディブローのように効いてくると思っています。
プロジェクトベースで動いていくDX時代の組織に必要となる「どんな困りごとでも誰かが助けてくれる」というコミュニティを作って、今後さらに組織に貢献ができたらいいなと思っています。
ーーこのようなコミュニティ活動はビジネスへの貢献が必ず問われると思うのですが、みなさんの考えをお伺いできますか?
加藤さん:「ビジネス」という言葉を広く捉えてみると、事業づくりだけでなく、人づくりや組織づくりを行うことの大切さに気付けると思います。
古い考え方や行動しかできない人と組織のままでは新しい事業なんて生まれないですし、非効率ですよね。だからこそ、DXにおいては組織カルチャーの変革が重要です。
さらに、コミュニティ自体のKPIや目標数値に捉われすぎない方が良いと思います。コミュニティ単体で何かを達成することではなく「デザイン思考を広めて組織のカルチャーを変えていくこと」が目的なので、細かな指標を追うことにあまり意味はないと思います。
登る山さえ間違っていなければ少し寄り道してもいいと私は思います。
日水さん:継続していく上では直属の上司や支援者の方々にコミュニケーションをとりながら理解を得ていくことが大事だと思いますので、コミュニティの背景や想いを言語化することや丁寧なコミュニケーションは引き続き大切にしていきたいです。
吉村さん:今日私も富士通さんのことが大好きになりましたし、こういう活動や情報発信をすることで、直接的にというよりも最終的にビジネスにつながるようなファン作りができると思います。会社に信頼感を持っていただくことで、その結果がビジネスに還元されると思っています。
武田さん:コミュニティの価値って、そこにいるだけで情報がどんどん入ってきたり、それぞれの知見を持ち寄って議論をスピーディに進められたりと課題に対する解像度を高められることにあると思います。
そういうコミュニケーションの場って会議をしているだけでは生まれないですし、なかなかコミュニティ以外のもので成立しないと思うんですよね。
富士通さんの話を聞いていて、「コミュニティがビジネスでは無価値」と論じること自体が意味のないことなのかなと感じています。リコーでもそういった捉え方でコミュニティをさらに拡大していきたいですね。
これからの展望
最後に、皆さんそれぞれが運営するコミュニティの今後の展開・展望を語っていただきました。
◆やわらかデザイン
加藤さん:コミュニティを活用した新たな取り組みとして立ち上げた、社会課題をテーマにしたユニークなトークイベント『目的地は鬼ヶ島』の活動をもっと広めていきたいですね。
日常生活で接する機会の少ない社会課題に対する皆さんの解像度を高めていくこと、デザインマインド・ソーシャルマインドを広めていくことも引き続き目標としつつ、さらにビジネスを生み出すきっかけづくりができればと思っています。
◆スナックまり
日水さん:オンラインスナックで全国各地のグループ社員の方とつながることができたので、次はリアルスナックで全国行脚したいという野望があります!また、「スナックまり」の活動を通してさらにビジネスにも貢献していきたいです。
◆となりのこせいラジオ
吉村さん:現在、毎回20〜30人くらいの方に聞いていただいている社内ラジオ「となりのこせいラジオ」を、リコーグループ全員に聞いてもらうくらいの勢いで広めていきたいです。
このラジオは、メンバーが女性一人のグループで働いていて「話しづらい」「働きづらい」という気持ちを感じていた時、「少しでも同じような気持ちを持つ方の助けとなり、風通しの良い働きやすい会社になれば」という想いで始めた活動です。今後も、ラジオを通してそういった方達や会社のために貢献ができればいいなと思っています。
◆みんなのデザイン思考とアジャイル
武田さん:みんデジャコミュニティとしては、「いかに盛り上げるか」が今後のテーマですね。そのためには運営のコミットももちろんですが、コアなファンを運営に巻き込んでいくなど、もっと惹きつけられるような魅力を作っていきたいです。さらに変わるきっかけを与えられるような、人が集まってくる場づくりができればと思っています!
さいごに ーリコーが実践するデザイン思考とアジャイルの浸透ー
今回のイベントは、組織やコミュニティづくりの先人である富士通さんのお話をたくさんお伺いすることができ、また、リコーのコミュニティについても知っていただく貴重な機会となりました。
富士通さんにお話しいただいた様々なアイデアを参考に、「みんなのデザイン思考とアジャイル」ももっとやわらかな思考で変化していきたいと思っています。
「みんデジャ」をはじめとした様々な活動によってリコーアジャイルの組織全体への浸透をミッションとする「リコーを芯からアジャイルにするTF(タスクフォース)」では、以下のような活動を行っています。
・リコーアジャイルの実践支援
デザイン思考とアジャイルを活用した伴走支援サービスや、フレームワークなど独自開発した実践ツールの提供を行っています。
・コミュニティ「みんなのデザイン思考とアジャイル」
今回のようなイベントや特別プログラムの開催、Teamsを活用したコミュニティ活動、このnoteでの発信を行っています。今後も皆さんに楽しんでいただける機会をたくさん用意したいと思いますので、リコーグループの皆さんはぜひご参加ください!
・管理職向けリコーアジャイル研修
https://designthinking-agile.jp.ricoh/n/n9f3d49668cc7
・慶應SDMとの共同研究
リコーアジャイルの成熟度レベルを研究
https://designthinking-agile.jp.ricoh/n/n36ff5a96f1c1
・「リコーアジャイルコンセプトガイド」の作成
eラーニングも開発中です。
今後も様々な活動を通して、皆さんと一緒にリコーをさらに盛り上げていけたら嬉しいです!
やわデザのnoteもぜひご覧ください☺▶https://note.com/yawaraka_design/
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リコーでは組織全体でデザイン思考とアジャイルを取り入れた改革に挑戦中です。noteを読んでくださっている社内外の人たちと知見を交換できると大変嬉しいです。
これからも、デザイン思考とアジャイルの実践現場から、みなさんの役に立つ情報をお届けしていきます。
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