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組織運営をアジャイル的アプローチで行うために ー 組織アジャイルを自走する実践プログラムの中身

こんにちは、「みんなのデザイン思考とアジャイル」をリコーで運営している武田です。今回は、私たちがリコーで提供し始めた「リコーアジャイル 実践プログラム」を紹介します。

※リコーアジャイルとは?
リコーがデジタルサービスの会社に転換を図るために必要なはたらき方、組織文化を作るための考え方・取り組み方のこと。詳細は以下の記事をどうぞ!

組織運営のアジャイル的なアプローチを具体的に広く実行するためには、実践するチームがある程度自走できるようなフレームワークを作る必要があると考えました。そのため、これまでファシリテーターの力量に依存していたプログラムをわかりやすくかみ砕き、順を追って実践できるようにこの半年間準備をしてきました。

いよいよ動き出す実践プログラムの全体像、各プログラムの関係性を知ってもらい、「このように実行すれば組織運営もアジャイル的なアプローチができるのか」と興味を持ってもらうとともに、それほど難しいことでもない、と感じてもらえればうれしいです。


リコーアジャイル実践プログラムの狙い

「リコーアジャイル実践プログラム」というと、何か特別なことのように見えてしまいますが、PDCAのような多くの組織にとって馴染み深い手法と大きく変わるわけではありません。ただ、以下のような特徴があります。

✔ チームの存在意義やフォーカスする領域を全員で考え同意する。
✔ これまでよりずっと短期間にPDCAのサイクルを回す
✔ チームで確実に進捗するために可視化を重視し、ふりかえりを定例化する。
✔ チームミーティングを報告の場から、議論とフィードバックを中心にする。

今回紹介する実践プログラムは、特にアジャイルの価値観に基づいたフレームワークです。これまで、定例ミーティング中でなんとなくやってきたこと、ごまかしたり、うやむやにして目をつぶってきたことをやりきるための枠組み、手段を提供するものになります。

実践プログラムの流れ

現在、提供するために準備をしているのは以下のプログラムです。

  1. リコーデッキ ( ≒インセプションデッキ※)

  2. WorkTo でスクラム(開発中)

  3. ふりかえり ワークショップ

  4. むきなおり ワークショップ

今期のリコーアジャイル全体の構想では、上記の組織運営のアジャイル的なアプローチのためのプログラム開発を、事業開発寄りの「リコースプリント※」よりも先行させていきます。

※インセプションデッキとは
アジャイルの現場で取り入れられている、プロジェクトの全体像をメンバー全員が齟齬なく認識する目的で作成されるドキュメントのことです。
「The Agile Samurai: How Agile Masters Deliver Great Software」Jonathan Rasmusson著 参照

※リコースプリントとは
事業の仮説検証を支援するためのプログラム。初期仮説を生むためのデザイン思考ワークショップや検証のためのプロトタイピングワークショップなど、事業提案までを持っていきます。

リコーアジャイルの全体像

プログラム1 リコーデッキ

リコーデッキは、アジャイル開発で用いられるインセプションデッキをベースに、組織運営にフィットする形に修正し、多くの人が使えるように丁寧に説明したものです。

その目的は、自分たちチームが何のために存在し、比較的長期のスパンで何をやりとげるのかをメンバー全員が考え、議論し、取捨選択することで、目標を共有し、コミットメントを高めることにあります。

アジャイルの価値観として「プロジェクトは計画通り進まない」ことを当然としているので、チームが扱うスコープ、大きな目的、優先順位、リスクを共有することで、個人がバラバラな方向を向いてに活動しないように合意形成をしておくことが重要です。

リコーデッキを作るうえでポイントになるのは、「決められないことを決めたものとして扱わない」ことです。ミスリードを避けるため、わからないことは、いったん保留したり、探索自体を目標にすることが有効です。

【リコーデッキのメニュー】

  1. われわれはなぜここにいるのか
    「我々の組織だからこそ」の存在意義を皆で言葉にし、全員で合意する

  2. ご近所さんを探せ
    誰とどのように関わっているか。キーマンの情報を共有し、目線合わせをスムーズにしたり、協力者を巻き込み・増やしやすくする

  3. やらないこと / やることリスト
    組織として取り組むこと、取り込まないことを明確にし、業務範囲の輪郭をはっきりさせる

  4. 夜も眠れない問題
    想定リスクのリストアップ。想定しているリスクを挙げ、全員で認識する

  5. 期間を見極める
    2、3か月で達成したい日程表。直近の3ヶ月/今年1年 で達成したい目標を可視化し、スピード感を全員で共有する

  6. トレードオフスライダー
    QCD等の優先順位スライダー。デッキ期間内のQCD等の優先順位を明示し、全員で何を優先・妥協して進めるかを確認する。

  7. エレベーターピッチ
    誰のために何を提供するのか。組織が、誰のために何を提供するのか端的に顧客価値を示し、メンバー間で共通認識を得る

プログラム2  WorkToでスクラム(開発中)

WorkToは、リコー社内で開発され、運用が始まっているタスクの進捗管理ツールです。アジャイル開発で使われるバックログツールの類のサービスですが、その特徴は、組織運営をアジャイル的にアプローチするために設計されている点にあります。

組織・プロジェクトを横断して、俯瞰し、組織にまたがって複雑に絡み合うプロジェクト、タスクを可視化、コラボレーションを促進することを目的に開発を続けています。

主な機能としては、日々のタスクを管理する基本的なカンバン機能やリコーデッキで明らかにしたチームの目標やマイルストンを常に意識できるように参照できる機能、スプリントゴールの宣言とレビューを一対にして記載できる機能などがあります。これらの機能を使うと、WorkToで成果を可視化しステークホルダーに共有、関心を高めることができます。

プログラム2は、このWorkToをつかって隔週のスプリントプログラムの実行を支援するものです。
リコーデッキで明らかしたチームがフォーカスする対象をタスクに分解して、WorkToに登録し、誰がいつまでにやるのか日々の業務に落とし込み、毎週の中間レビューと隔週のスプリントレビューを実施しながら進捗を共有、フィードバックしあいながら、成功も失敗も踏まえて学習し、確実に前に進められるようにします。

いまのところ、この運営は属人的なスキルに頼っているところがあり、プログラム開発はこれからになります。

WorkToの画面

プログラム3,4 ふりかえり と むきなおり ワークショップ

「ふりかえり」ワークショップでは、一か月で何をやってきたかを思い起こし、何がうまくいって、何が問題だったか、その要因をチームみんなで探り、その結果、何を始めて、何をやめるか、何を続けるかを可視化します。
月に一回、長めの時間をとって全員で集中的に議論することで、チームが向かうべき方向性やアウトプットへの解像感を高め、次の期間のタスクを自律的に進められるようにすることが狙いです。

「ふりかえり」は、多くの人にとって馴染みやすいもので、リコーアジャイルを始める足がかりとして、ふりかえりから進めてみることも良いと思います。
「むきなおり」ワークショップは、「ふりかえり」に加えて、リコーデッキで掲げた内容全体を見返し、これまでの活動を踏まえて、目標の妥当性をみんなで点数で評価します。その理由を共有し、必要に応じて目標自体の修正をします。

期初に掲げた目標ややり方を半年や一年かけて漫然とやり続けるのではなく、比較的短期間に評価することで変化や期間中に得た学びを効果的に活かしていくことができます。

「ふりかえり」や「むきなおり」で浮かび上がった課題をタスクに分解、WorkToに登録し、次のスプリントや次のふりかえり・むきなおりのまでの期間にやるべきことにフォーカスできるようにします。

まとめ

全体を通して共通しているのは、可視化によって誰もが意見を表明する機会を作り、議論によって互いの関心を高めていくことを重視している点です。

それには「心理的安全性」を確保することが非常に重要で、議論が自然とフラットに進められるようなプログラムの設計を心がけていきます。

リモートワークの一般化で発展したオンライン共同編集ツールを多くの人が使えるようになったことで、以前よりもむしろ手軽に実践できる環境が整い、今がチャンスだと感じています。

リコーは、組織全体でデザイン思考とアジャイルを取り入れた改革に挑戦中です。これからも、デザイン思考とアジャイルの実践現場から、みなさんの役に立つ情報をお届けしていきます。

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