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既存事業の経験しかないリコー社員が新規事業開発実践プログラムに参加してみた

こんにちは、「みんなのデザイン思考とアジャイル」をリコーで運営している仲里です。
この記事を読んでいる方の中には、新規事業の立ち上げに興味はあり実際にやってみたいけれど、どこから始めたらいいか分からないという方もいると思います。

リコー社内にはTRIBUSというアクセラレータプログラムもあるのですが、そこに応募するほど自信がなかったり、現職との関連がなさすぎて新規事業に時間を割くことに躊躇している方も多くいます。

商用印刷の機種開発に従事していた私もそのような一人でしたが、LLPという新規事業開発の実践プログラムに参加したことで、新規事業についての知識や指針を得ることができました。

新規事業を進めるには、ある程度の「型」があります。中でも、仮説検証はテーマ全体の中核となる重要な活動です。

そんな方々にむけて、2021年5月〜8月にデジタル戦略部主催のLLPに参加した私の経験をシェアすることで、何らかのお役に立てばいいなと思っています。


参加したプログラム

「LLP」はリコー独自の用語ではなく、”The Lean Launchpad”と呼ばれ世界各国で行われている、新規事業開発プロセスを実践しながら学んでいく起業家教育プログラムです。

LLPとは...

ビジネスモデルキャンバスや顧客開発モデルなどの新規事業開発手法を活用して商品アイデアの事業化や、大学および研究機関の研究成果である技術の事業化の仕方を実践的に学ぶ起業家教育プログラムである。
2010年にカリフォルニア大学バークレー校の教員であるSteve Blankが発案し、同学およびスタンフォード大学エンジニアリングスクールで初めて実施された。現在では、コロンビア大学やプリンストン大学など全米の様々な大学で実施されている。米国外でも、我が国を含めイギリスやシンガポールなど世界各国で行われている。

(参照:「新規事業開発のための教育プログラム 『The Lean Launchpad』と 日本における取り組み紹介」より)  

私が参加したLLPプログラムは、2〜3週間を1つの期間として顧客候補の方々へのインタビューとチーム内での考察を繰り返し、メンターからアドバイスをいただきながら、仮説検証を進めていくものでした。
そして約3か月間の活動の後、最終日には事業提案ピッチも行いました。

事業提案ピッチの段階で、PSF : Problem Solution Fit (顧客が抱える問題や課題を解決するプロダクト、サービスを提供している状態のこと)している状態が期待され、活動自体もPSF達成を目標にしていました。

リコーのデジタル戦略部では、各事業部の新規事業を支援することで、新たな顧客価値創出への貢献をミッションの1つとしています。このミッションを果たすために、まずデジタル戦略部のメンバーが自らのケイパビリティを磨く必要がありました。そこで、部内でLLPプログラムを運営してみて、各メンバーが事業立ち上げのプロセスを学習することも目的のひとつにありました。

ワークプレイスに関する新規事業にチャレンジ

■参加の経緯

LLPに参加した2021年5月当時、私は商用・産業印刷事業を担うリコーグラフィックコミュニケーションズ(RGC)に所属し、高速インクジェット機のソフトウェア開発に従事していました。2019年ごろ、後にLLPを企画する現在の上司と出会う機会があり、その縁で声をかけていたただき、LLPの1プロジェクトのリーダーとして参加することになりました。

それまでは、新規事業開発に興味はあったものの、既存事業でのウォータフォール型開発に取り組むことがほとんどだった私にとっては、新規事業開発のプロセスを実践的に学べる良い機会だと思い前向きに参加しました。

■取り組んだ内容

2019年当時、所属とは別の社内活動として、5Gを活用した新しいワークプレイス構想に取り組んでいました。2021年に参加したLLPではそこでの取り組みが起点になり、私たちのチームでは、「3WP(サードワークプレイス)」という働く時間を提供するワークスペース提案をするサービスの新規事業提案を考えました。

「3WP(サードワークプレイス)」の内容は、スケジューラと連携し、外出予定の目的・時間・場所・移動経路から適切なワークスペースを自動的に検索し予約提案してくれる、ワークスペースのマッチングサービスでした。

▲3WP(サードワークプレイス)コンセプト
▲3WPと既存サービスの違い

■チームメンバー

チームメンバーも、以前一緒にワークプレイス構想を検討していたメンバーで開始しました。このnoteでもおなじみのアジャイル担当永田さんと、リコーデザインメンバー2名、社外デザインメンバー1名の5名チームでした。後半からは、同じくnoteでもおなじみの武田さんチームの3名も加わっていただきました。

今考えてみると、大半がデザイナーという特殊なチーム構成でしたが、皆さん兼業で時間がない中でも高いモチベーションと前向きな姿勢で取り組んでいただき、とても助かりました。

新規事業における仮説検証を実践した変化

■始める前は不安だらけ

それまで全く取り組んだことのない仕事だったので、始める前は様々な不安がありました。

アイディアは個人の課題感に基づく直感にすぎなかったので、本当にこれでスタートして良いのかと弱気になったり、もうちょっとアイディアを練ってから・・・と一歩踏み出すことをためらったりする気持ちもありました。

リーンスタートアップに関する本や事前の学習教材を読んだりはしましたが、自分のプロジェクトへの落とし込みがイメージできず、先行きが見えない不安もありました。

加えて、私は人と話すことがあまり得意ではないので、これからやらなきゃいけない膨大なユーザーインタビューのことを考えると胃が痛くなる思いでした。

LLPでは仮説を検証していくため、ユーザーインタビューがとても大事な活動のひとつとされています。
想定している顧客がどういう場面で、どのような課題に直面しているのか、それはどういう背景や構造によって起きうることなのか。ロジカルなストーリーを仮説立てて、それに対応する独自の価値提案・ソリューションを検証していくのです。

仮説の時点で論理的につながってることが大事で、この時点で論理が破綻していると後々何の検証をしているのかわからなくなってしまいます。そのための検証はユーザーインタビューが最良の方法となります。

■やってみたら意外とできたインタビュー

個人的には苦手な分野でしたが、ユーザーインタビューをしないことには何も進みません。私たちのチームはまず身近なところから始めました。

リコー社員が利用可能なシェアオフィスサービスを活用している人を対象にアンケートを実施し、利用頻度の高い方に片っ端からインタビューをしていきました。

数をこなすうちに、インタビューのやり方を体で覚えていきました。ある程度慣れてきたところで、インタビューの対象者をグループ会社、パートナー企業へ広げていきました。そのようにユーザーインタビューを繰り返しながら、チーム内で考察と仮説修正を繰り返していく中で、インタビューへの苦手意識が徐々になくなっていきました

プログラムの終盤では、インタビューさせていただいた方から数珠つなぎでインタビュー対象者を紹介してもらったり、シェアオフィス利用を導入していると思しき他社様の問い合わせフォームからいきなり連絡してユーザーインタビューをお願いしたり、開始前には想像できなかったマインドセットの変化を自覚することができました。

結局、最終日までに計60名にお話を聞くことができました。

▲インタビュー実績

■インタビューで学んだ大切なこと

インタビューの数をこなすことは重要ですが、何より一人一人の生の声を聞くという体験の重要性に気付かされました。

期待通りの回答がもし出てきたとしたら、声を上げてガッツポーズするくらい珍しいことなのですが、無駄になったインタビューは一つもなかったと断言できます。期待通りにならない理由や背景が出てくると、それを理解することで想定していなかった視点に気付かされ、仮説が1つ1つブラッシュアップされました。

またそれと同時に重要だと感じたのは、仮説の論理的な整合性でした。

アイディアが成立するための顧客の状況、課題、その回避手段などの前提条件を常に整理し、ユーザーインタビューで確かめていくことで、効率的に仮説をブラッシュアップできると思います。

ただ、私たちの活動ではそこがうまくできなかったという反省はあります。

途中からインタビュー実施自体が目標になってしまい、考察や仮説見直しが甘いところが多々ありました。その結果、そもそも仮説のロジックが成立していないため聞いても意味がなかったことや、聞くべきことを聞けていなかったことに気づくということが良くありました。この経験は、その後の私の活動に大きな糧になりました。

仮説検証は、あなたにもできる やりがいのある経験

いかがでしたでしょうか?
それまで新規事業開発なんてやったことがなかった私が、新規事業開発の実践プログラムであるLLPに参加したときの体験談をまとめてみました。

このプログラムを通じて一番良かったのは、新規事業開発において「手と足を動かしながら頭を動かす」ことの重要性を体で覚えることができた点です。

個人的な事情もあり、最終ピッチを終えた時点で「3WP」の活動は中止としました。ただこの活動の中では、提案ソリューションをお金を払って使いたいと言ってくれる方に出会うこともでき、新規事業開発を実践的に学ぶという観点でとても得られるものが多かったと思っています。

私はその後この領域をより深めたいと思い、今年度からデジタル戦略部価値創造室に異動し、価値創出活動の支援業務に取り組んでいます。

今回の記事で、仮説検証を通した事業開発に興味を持ったリコー社内の方がいらっしゃれば、みんなのデザイン思考とアジャイルのsharepointからご連絡ください。


本noteではこれからも「デザイン思考」「アジャイル」への取り組みをご紹介していきます。またコメントやフィードバックをいただけると嬉しいです。
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「みんなのデザイン思考とアジャイル」運営の仲里


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