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リコーの現場リーダーが感じている課題とは? より深化したデザイン思考とアジャイルの研修から

こんにちは、「みんなのデザイン思考とアジャイル」を運営する大関です。

今回は、今年度上期に実施したリコーの管理職・リーダー向け研修「“リコーを芯からアジャイルにする ” は、リーダーから始まる!」をご紹介します。

本研修は昨年度も同タイトルで実施しており、noteでも研修の背景、内容、実施後の施策についてご紹介しておりました。

今回は、昨年度の記事と同様に研修の背景とその内容、さらに研修時に行った「リコーアジャイル(※)の実践調査」から得られたリーダーが抱えている課題・取り組みについてご紹介したいと思います。

※「リコーアジャイル」の浸透とは
リコーアジャイルの浸透とは、デザイン思考とアジャイルの考え方・手法が日常的な組織運営にまで浸透し、困難な課題や未経験かつ不確実性の高い課題に対して、いつでも対応できるような組織力をリコー全体で獲得できている状態のことです。

リーダー研修の対象と研修内容

昨年度の研修では、国内リコーグループの第二/第三階層長を対象に実施しておりました。今回は主に第四階層長(グループリーダー)と専門職(エキスパート)を対象に実施しています(現在下期の研修は準備中ですので、既に実施している上期の研修結果をお伝えします)。

前回は比較的上位層に対して研修を行いましたが、今回の対象はグループリーダーとエキスパート、つまり実際に現場でリーダーとして指揮を執っている方たちです。そこで、研修を行うにあたっては以下のような仮説と方針をたて、研修を設計・実施しました。

【仮説1】
デザイン思考、アジャイルと聞くと「新規事業開発」「ソフトウェア開発」に向けた手法だと認識している。そのため、自部署・チームでの活用をイメージできない

【研修方針1】
チームや組織の運営において、デザイン思考およびアジャイルを具体的にどのように活用できそうか、ワークを通じて体験し、実際の業務で運用しやすくする

【仮説2】
リーダー自身の悩みや組織運営における考え、工夫について、情報共有する場が少ない。どのようなやり方がうまく行くのか、独りで試行錯誤しがちである。

【研修方針2】
チームでワークをし、リーダー同士が対話・情報共有・互いに共感しあうことで広く互いの課題や実施している施策や考えを知り、自組織の運営に活かせるようにする。

上記仮説と方針から、研修は講義パートを最小限とし、自身で手を動かしてもらえるワーク部分に時間を割きました。また、チーム内で対話する時間を設け、自身の取り組み等について意見・情報交換できるようにしました。

研修では、リコーアジャイルを実践する組織がとるべき態度として重要になる、「関心」「学習」「自律」をテーマとした事前学習のための動画を準備。当日はデザイン思考とアジャイルを組織運営で実践することを想定しグループワークを実施しました。

組織運営において起こりがちな「あるある」問題を扱うことで、実際の業務との結びつきをイメージしやすく、さらに他部署リーダーとの交流も図りやすくしました。チームに分かれて対応策を議論し、個人の認識を他者の視点から認知することで、デザイン思考とアジャイルがもつ基本的な価値観の理解を促すことを試みました。

研修の反応、課題と実践に関する調査結果


実施後のアンケートは、①研修自体のアンケートと、②リコーアジャイル(デザイン思考とアジャイル)の実践に関する調査の、2種類を実施しました。

【①研修アンケート結果】

本研修の内容について、67%が受講前に知っていたと回答していました。しかし受講後には、さらに多くの73%が意識の変化を感じ、これからの業務に活用できるとの回答が97%に上りました

これは研修を通して、デザイン思考・アジャイルの実践に対し前向きに捉えられ、マインドチェンジが起こったと受け止めています。

普段の組織運営について改めて考える機会となった」「対話による気づきがあった」「必須スキルである」とのコメントがあった一方で、「時間効率や各ワークのつながりが分かりづらい」「リコーアジャイルの全体像への理解には至らなかった」「基礎的すぎると感じた」など、改善点もみられました。
これらは下期に実施する研修において改善していく予定です。

【②リコーアジャイル実践に関する調査】

研修で紹介したリコーの目指す組織に対して、ご自身の組織の現状をどのように捉えているか、研修を受けたリーダーに任意で自己診断をしてもらいました。
また、さらにそれぞれの観点で抱えている課題、それらに対する取り組みについても調査しました。

以下に、いくつかのコメントを抜粋してみます。 
 
課題ととらえていること

  • チーム内で発言するメンバーが偏っている・限られる

  • 業務の繋がりがないメンバー間で横のつながりが希薄になりがち、互いに関心を持ちづらい

  • 現業が多忙でスキル習得・改善活動・お客様課題へ取り組む時間が取れない

  •  組織の戦略やビジョンについての理解が不十分、または人による差が大きい

  • 組織目標について、チーム独自の戦略への反映、見直しが不十分

  • お客様の困りごとを充分に把握できていない、課題の本質を掴みきれていない

  • さらなるニーズの発掘やお客様価値の拡大が必要


課題に対してどのような取り組みをしているか

これらの課題に対し、組織の状態を高評価したリーダーたちの取り組みはどのようなものだったのかをご紹介します。

このアンケートでは、研修で扱った「関心」「学習」「自律」に加え、お客様価値の拡大に関する取り組みについても伺いました。ここでいうお客様はエンドユーザーに限らず、組織やチームのステークホルダーも含んでいます。

「関心」ある組織に向けて

朝礼、夕礼等を活用し、各自の進捗状況や応援可否等を確認している
メンバー間の対話の機会を増やしている、ミーティング内で意識のすり合わせを行う
・検討の場では全員に発言を促す
・頑張ったところ、上手くいかなかったところを各自に話をしてもらい、マネージャーも含め相互に称え・良かった点を褒め合う
小グループでのディスカッションや小集団活動でコミュニケーション活性化をはかっている

学習する組織に向けて

・ジョブローテーション等で担当の幅を広げている
OJTできる環境を整えている
チーム内で勉強会を定期的に実施、各自学習したことを室内持ち回りで発表している

自律する組織に向けて

・全体戦略とのつながりを重視し、やる意義を明確にしている
・概ね二週間に一度、組織目標とのすり合わせを実施している
・戦略立案に向けてワーキンググループの活動を定期的に実施している
・目標が実現不可能なときはグループ目標を立て、上位との齟齬を解消するようにしている

お客様価値の拡大に向けて

・お客様訪問を頻回に行っており、現場~事業主の声をヒアリングしている
アンケート→フィードバックをくりかえし、多くの声を拾える施策を実施
・顧客の声を収集し、自発的に提案につなげている
・お客様のプロジェクトへの参画を経ての業務提案をしている

研修後の取り組み

さらに私たちは研修を起点として、よりデザイン思考とアジャイルを組織運営に活用して貰うべく、以下の活動を実施しています。

  • サポートプログラム

研修では参加したリーダー同士でグループワークをしたため、実際の業務上のメンバーでどのような対話をして目指すチーム・組織へ近づけられるか、に関しては具体的なイメージが掴みづらかったのではないか?と考えました。
そこで研修後にサポートプログラムとして、希望者に追加のワークショップを計画しました。

チーム内で使ってもらえる対話用のテンプレート
「リコーデッキ」
「ふりかえり・むきなおり」
「チームビルティング」
の活用や、
かんばんによるタスク管理
会議/プロジェクトのファシリテーション

を題材とし、目的や手法を知るだけではなく体験できるワークショップ形式で実施しました。

参加者の方からは「理解が深まり展開しやすくなった」「体験することで効果を説明しやすくなった」「より論理的・体系だった形でのな理解が進んだ」「すぐ実践で使いたいと感じた」等、ポジティブなコメントをいただいています。

  • 組織への支援

また、前回から引き続き、希望する組織には実践に関する相談・支援を実施しています。

テンプレートを使ってみたい」というライトな相談から、「自組織の課題について相談したい」「デザイン思考を活用したワークショップの企画・実施スキルをつけたい」など、大小さまざまな相談を受け付けています。

希望組織への支援では、これまでのべ60チーム以上にリコーアジャイル実践のためのテンプレートを配布し、実践を支援しています。

私たち「みんなのデザイン思考とアジャイル」運営は、これからも、本研修で得られた課題の解決に役立つ活動やイベント、情報発信を増やしていく予定です。

***


リコーでは組織全体でデザイン思考とアジャイルを取り入れた改革に挑戦中です。noteを読んでくださっている社内外の人たちと知見を交換できると大変嬉しいです。
これからも、デザイン思考とアジャイルの実践現場から、みなさんの役に立つ情報をお届けしていきます。

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