新しい仕事の仕方に向けて、チームはどう変化していけるのか
リコーアジャイル 実践プログラム 活用インタビュー
こんにちは、「みんなのデザイン思考とアジャイル」の運営チームです。
私たちは、組織運営のアジャイル的なアプローチを具体的に広く実行するために、チームがある程度自走できるようになるためのフレームワーク「リコーアジャイル 実践プログラム」を提供しています。
今回は、この実践プログラムを活用いただいている、リコークリエイティブサービス株式会社 マーケティング支援事業部 テクニカルコミュニケーション室 室長の小川 啓介さんにお話をお伺いしました。
世の中の急速な変化や組織の方針転換により、自身のチームにも変化の必要性を感じつつも「何から始めればいいかわからない」「思うように進まない」と悩む方も多いのではないでしょうか。小川さんのチームも、これまでずっと一定のプロセスに則って仕事を進めてきたため、変化に対する大きな不安や難しさを感じられていたそうです。
インタビューでは、そんな中でいかにしてチームを変革へと導いてきたのか、取り組んだことやその成果について伺いました。
長年続けたプロセスを変革する難しさ
ー まず、チームのお仕事について教えてください。
小川:私たちのチームは、製品にまつわるドキュメントやグラフィック関連をまとめて担当しています。
一番メインとなるのは、ユーザーマニュアルの作成。日・英版の作成と多言語翻訳のほか、サービスマニュアル、FAQ(よくあるご質問)、製品のパッケージなどのグラフィック、操作動画、販促ツール等の作成や、UI(ユーザーインターフェース)の多言語訳など多岐にわたる業務を担当しています。
ー どのような課題があったのでしょうか?
小川:これまで、私たちの部署はエッジデバイスという製品の開発にかなり依存してきました。しかし、市場環境の変化により製品自体の数が減ってきている中で、「ものを変えるだけではなく仕事の仕方を根本的に変えていかねば」という危機感を持ちはじめていました。
また、会社からも「デジタルサービスの会社へ変化する」という方針が発表され、それにフィットするためにデジタルサービスに対応したアウトプットへの変化を意識するようになりました。
さらに、開発チームがアジャイル開発へと変化したことに伴って、私たちも柔軟性のあるプロセスへと変えていく必要がありました。
しかし、私たちのチームにはこれまで何十年ものあいだ続けてきたプロセスがあり、ベテラン社員を多く含むメンバー全員を巻き込みながら変革していくのはかなり難しいことでした。なんとか変えていこうと声をあげるものの、メンバーは鈍い反応で…。
チームは真面目なメンバーが多く、だからこそ今までの習慣やプロセスを捨てられず、そもそも「変わっていいんだ」という思考になりづらかったように思います。「とりあえずやってみよう!」ということが苦手なチームでした。
そこで壁にぶつかってしまい、何か使える手はないかとリコーグループ内の過去の活動や事例をリサーチしていたところ、リコ芯TF(リコーを芯からアジャイルにするタスクフォース)の活動を知りました。その後、リコ芯が主催するマネジメントカレッジを受けて、「これは自組織にうまく使えそうだ」と実感し、すぐにテンプレートを申し込みさせてもらいました。
「インセプションデッキ」がコミュニケーションの題材となり、本音の議論のきっかけに
ー テンプレートを活用し、どのような取り組みを実施されましたか?
小川:まずは「リコー版インセプションデッキ(リコーデッキ)」のテンプレートを活用しながら、2つの取り組みを実施しました。
1つめは、目標設定。
私たちのチームでは、会社や事業部から降りてきた目標だけを推し進めるのではなく、自分たちなりのものづくりの目標として、一人一人が心から納得する「腹落ちする品質目標」を重点的に設定しようと考えていました。
ちょうどそれを決めるための手法に悩んでいたところ、このインセプションデッキが使えそうだとひらめき、各グループリーダーにテンプレートを使って進めてもらいました。
2つめは、チーム内のコミュニケーション。
コロナ禍では、様々な場所から集まったメンバーがルールも決まらないうちに全員リモートワークになり、以降もそれが定着したため、現在チームの約90%がリモートワークを行っています。そのため、なかなか顔を合わせて話し合う機会がありませんでした。
そこで、リコー版インセプションデッキをコミュニケーションの題材として活用しました。
他にも、「ふりかえり」と「むきなおり」のテンプレートを使って、チームリーダーと私で1年間やってきたことの振り返りを行っています。最近では開発グループでも「ふりかえり」を実践し、かなり盛り上がっていたみたいです。
ー 実践した所感としてはいかがでしたか?
小川:リコー版インセプションデッキのワークでは、メンバーそれぞれが瞬間的に思ったことや考えたことを付箋に書いてもらうのですが、今まで喋らなかった人も結構意見を持っていることが見えて、発見がすごく多かったです。腹を割って話をする良い機会になりましたし、「そんなこと考えてたんだ!」っていう気付きがたくさんあって面白かったです。
これまでは意見は持っていても言い出せない人もいたと思いますが、このワークを通して一人一人が思っていることをオープンにして、それを元にまた誰かが意見して、という循環が生まれ、議論を深めていくことができるようになりました。
ー 反対に、進めるにあたってうまくいかなかったことはありますか?
小川:難しいなと思ったのは、リーダーとしての進め方ですね。私がファシリテーターとして仕切ることが多かったのですが、なかなか準備の時間が取れず進行がスムーズにできないこともありました。
また、メンバーからは「ツール(Miro:オンラインホワイトボード)を使いこなすまでに時間がかかった」という声もありました。理解するまでに諦めてしまった人もいると思うので、アレンジできるまで使いこなすことができれば、より活性化できるんじゃないかなと思っています。
新しい働き方に向けて、考え方を変えるために必要なこと
ー チームにはどんな変化がありましたか?
小川:私は、仕事の仕方を変えるということは、考え方を変えていくことだと思っています。今回提供していただいたテンプレートは、そういった考え方を変えるためのツールとして役立てることができました。
新しい仕事の仕方が当たり前になるところまではまだ到達していないですが、まず「変わってもいい」というマインドに変わり、チームが変化するための手法を理解することができたのは、非常に大きな第一歩だったと思っています。
ー 手法からマインドセットが変わる場合と、その逆のパターンもありますが、どちらか一方だけだとうまくいかないものですよね。
小川:そうですね。また同時に、その両方が変化できるかどうかは、メンバーの理解はもちろん、各チームリーダーの考え方の影響も大きいと思いました。組織が示す方向性に納得して、「自分も変えていこう」と自発的に考えられるかどうかがやはり重要だと思います。
このようなテンプレートがあることで、手法とマインドセットの両面を変えていくための本質的な会話をする場を持つことができ、さらにリーダーとメンバーが一体感を持って進めることができたと感じています。
ー 実践を通して、どのような気づきがありましたか?
小川:大きな気づきとしては、この手法はやってみるとそんなに難しくないということ。
アジャイルやデザイン思考という言葉を聞くと「難しそう」「私がやることじゃないかな」と構えてしまう人もいると思うのですが、実際にやってみると、みんなで意見を出し合ってこの先のことを考えて、実行と振り返りを行い、失敗したら変えるということを繰り返していけばいいだけ。それにみんなで気づくための場だったのかなって思います。
また、とにかくこのサイクルは継続的に繰り返すことが大切だと感じています。なかなか1 回では理解しきれないですし、小さい単位で何回もやりながら、トータルで大きい変化にしていけるといいですね。
ー さらに見えてきた新たな課題はありますか?
小川:今課題に感じているのは、様々なチームが繋がりあって成り立っている組織だからこそ、1つのチームだけが行動を起こしてもなかなか変わりきれないということ。
私たちは他部署と関係する業務が多いため、私たちのチームだけが変わったとしても、結局周囲のやり方や考え方に影響されて揺り戻されてしまうことがあるんですよね。
事業部や組織全体で変化に対して共通認識を持つことができれば大きく変わっていけると思うのですが、自チームだけで変革を起こすのはなかなか難しいと実感として感じているところです。
ー 最後に、同じように組織変革に対して課題を持っているリーダーに向けて、ぜひアドバイスをお願いします。
小川:私たちがこの変革を進めてきた根源には“危機感”があるんじゃないかと思っています。他の部門はどんどん効率化され、会社自体が変革へ向かっているのに対し、「自分たちも変わっていかなければ」「このままだと先はない」という危機感がチーム内に共通してありました。だからこそ、変化に向けて行動を起こすことができたのではないかなと思います。
ただ、会社から降りてきた方針をそのまま一方的に進めていくだけではなく、チーム全員にちゃんと腹落ちさせて、自分たちの芯を持って変えていかなくてはいけないと思っています。
その時の方法として、今回活用させてもらったフレームワークなど、チームが一緒になって進められるツールがあると心強いんじゃないかなと思います。
変革に向けてはまだまだ突破しなければならない壁がたくさんありますが、少しずつ変化を感じられているので、今後も前向きに取り組んでいきたいと思っています。
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お話をお伺いして、チームが変化していくためには全員が納得感を持ち、リーダーとメンバー全員が一緒になって考える一体感が不可欠であると感じました。
また、そのためには本質的な対話をする機会を持つことが欠かせませんが、行動を起こすにはハードルが高いと感じる方も多いかもしれません。ぜひ、今回の小川さんのチームの事例を参考に、テンプレートやフレームワークをコミュニケーションの題材として役立ててみてください。
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リコーでは組織全体でデザイン思考とアジャイルを取り入れた改革に挑戦中です。noteを読んでくださっている社内外の人たちと知見を交換できると大変嬉しいです。
これからも、デザイン思考とアジャイルの実践現場から、みなさんの役に立つ情報をお届けしていきます。
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