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失敗した元マネージャーが後悔を胸に、新たにマネージャーになるあなたに伝えたいこと

こんにちは、「みんなのデザイン思考とアジャイル」をリコーで運営している武田です。

年度末となり、人事異動の噂に花が咲く季節になってきました。そこで、新たにマネージャーになる方々の門出に、はなむけになる記事をお届けしたいと思います。

私は以前、1年だけ管理職をやっていたことがあります。私にとってはとても苦しい時期で、今となっては、ああすればよかった、こうすればよかった、と後悔ばかりです。今回はそんな苦いマネージメントの経験をお伝えすることで、少しでも不安の解消に役に立てられれば良いなと思います。


マネジメントを舐めていた


私は、リーダーに向いてない人間で、その自覚がありました。
なにせ小学生時代から考えても、何かしらのリーダー的役割を一度も果たしたことがなく、人前で話すのが苦手で、中心から外れ周辺部をウロウロしてるようなヤツです。
それゆえに会社に入ってからも、与えられたテーマの範囲で、楽しくデザインの仕事だけをやってきました。通常、会社員はそれなりの年齢になると、管理職になる前になんらかのプロジェクトを率い、マネジメントの経験を積んでいくものです。それを私は意識的に避けてきました。昇進せずとも、クリエイター気取りでいさせてくれる環境に甘えていたのです。

一方で氷河期ど真ん中世代の私の同僚は、少し景気が良くなるとリベンジとばかりドンドンやめて層が薄くなり、後輩はどんどん増えるわ育っていくわで、そろそろ何者かにならないと示しがつかない状況に追い込まれ、ついに管理職を仰せつかったのでした。

私は楽観的というか、痛い目をみないと学習しないタイプで「まぁ何とかなるか」と甘くみていました。しかし、すぐに途方に暮れることになります。リーダーの振る舞いや組織運営について、解像度が異常に低いままに管理職になったのだから当然と言えば当然です。さらに、着任した部署は新任には少々ハードな環境でした。

新任には、ちょっとハードな環境…

私が人生初のリーダーを任された部署は、こんな部署でした。

・鳴り物入りで新設された部署で、これまでの業務と大きく変わった
組織が新しすぎて、何をやればいいのか誰も知らなかった。あるのはぼんやりしたステートメントだけ
直属の上司もマネジメント経験が浅く、同じ階層の管理職もおらず、相談相手がいなかった
いきなり部下が11人と多く、スキルセットもレベルもバラバラだった
全然知らなかった人がチームに加わった
・ベテランの人生の先輩がチームの半分を占めた
コロナ期間中のオールリモートで、チームの雰囲気を感覚的に掴むことが難しかった
予算管理のような独特の仕組みで動いてるシステムを、理解している経験者が誰もいなかった

過酷な環境に加えて、プレーヤーの時は考えなくても良かった私個人の自覚・資質の問題が露呈しはじめました。

リーダーとしての資質不足が明るみに…


これまでの社会人生で、与えられたテーマをこなすことに慣れすぎていたため、「自分で動きだす方法がわからない」という、リーダーとしてはゼロどころかマイナスからのスタートでした。

自律性が欠如している上に、これと言ってやりたいことやビジョンがない。あっても個人で完遂できる範囲でしか物事を考えられず、大きな画を描けない。しかもリーダーたるもの・・・という思い込みがあり、チームの目標やゴールはリーダーが一人で設定するものと考えていたのです。

そんな自分の構想(この考え方が間違いだと気づくのは後々でした)を実現するために、人に動いてもらうことに対して申し訳なく感じていました(逆に言えば、人を信じていなかった、とも言えます)。

また個人の性質として、やるべき領域を限定して些末な部分の完成度を高めることも好きなので、完璧に準備しないと動けないというところがありました。フィードバックを前向きにとらえることができず、ツッコまれる事を恐れていました。そして人の話を聞くことが苦手で関心が薄く、すぐに他のことを考え始めてしまうので、議論や話し合いを面倒に感じ、組織の課題を共有することなく自分でやれば済む、と抱え込んでしまう傾向にありました。

つまり、「目標を立てた上でその達成のために交渉し、周囲から協力を引き出し、成果の出やすい環境を作ること」がリーダーの仕事なのだと、まったく理解していなかったのです。
ステークホルダーを明らかにして、交渉し、仕事をつくる、という管理職らしい仕事にも苦手意識が強すぎました。社内の力関係を理解し、誰と交渉するのが効果的なのか、周囲との関係を築く努力が必要だったのですが、仕事は降ってくるものと考えている間は必要性を感じられませんでした。

慣れない環境 と リーダーの資質不足。凶悪なコンボが課題が噴出させた


以上のような、新任にはハードな環境×リーダーには向かない資質のマネージャー、という凶悪なコンボから、課題が噴出しました。

1.目標がいつまでもハッキリせず、場当たり的な対策に終始し成果が曖昧になった

チームの目標がハッキリしないため成果に一貫性がなく、組織としての評価が曖昧となりメンバーの相対的な評価を下げてしまいました。

2.メンバーそれぞれの、やりたいこと・できること・やっていること がバラバラであることを見過ごし、チームの成長を妨げた

それぞれのメンバーが対応している業務が違いすぎるがゆえに、当時は共有することの意味を見出すことができませんでした。その結果、貴重な実践知が共有されることがなく、チームのケイパビリティを高めることに苦労しました。

3.コミュニケーション不全を指摘されても旧来のやり方を続け、その本質的な意味を考えなかった

これまでの習慣(それしか知らなかった)から、何も考えず週一の定例報告を実施しました。その内容は、メンバーが報告し私が要領を得ないコメントをするという、よくあるスタイルでした。業務内容をリーダーが正確に把握し課題の発生ポイントを的確に押えているような出来上がった組織とは違って、課題が常に変化するような業務においては、全く機能していませんでした。

コミュニケーション不足を指摘されたため、場当たり的に毎週1on1をやってみたものの、目的を明確にしなかったので雑談に終始したり、現場からのフィードバックを次に活かすこともできませんでした。
その結果、メンバーのニーズに応え成果を伸ばすという機会を妨げることになりました。

4.一人で何とかしようとして、かえってメンバーに迷惑をかけた

上位組織の運営方針を鵜呑みにして、チームの実態を考えないまま導入しようとした結果、メンバーからたくさんのフィードバックをもらいました。そのギャップを埋めるための作業をひとりで受け持ち、さらに業務ごとに部分最適を繰り返し、自らその業務に入っていった結果、工数が増大しました。それでも本質的な解決に取り組まず、自分で何とかしようとした結果、最終的に私のメンタルが死んでいらぬ心配をさせてしまいました。

マネージャーが一人でできることは多くない、それをまず認めよう。そして協力を求めよう。


かくしてチームとして最後まで機能することなく1年が経過し、チームは解散しました。メンバーはもちろん多くの方の期待に応えられず、ご迷惑をおかけしました。
この経験から得た最大の学びは、「一人で抱え込むことをやめよう」です。また、チームで向かうべき方向を常に共有し、更新するために、コミュニケーションの形を工夫することです。そこで、期初の立ち上げ期にできればどんなに良かったか、と今になって思うポイントを挙げました。

  • わからないものはわからないのだから、素直にメンバーに協力依頼を申し出よう

新しい部署では特に、新任マネージャーの強いリーダーシップは難しい。

  • チームで仕事をすることの意味や価値観を、みんなで共有しよう

属人的なスキルをシェアしチームとしてのケイパビリティを高めることが、結果的に時間的な余白を生み、よりハイレベルな成果に到達できる。そして大きな組織ではチームの評価の高まりが個人の評価に影響することを理解する。

新しい部署では期初は意外に時間が意外にあるものなので、その時期をうまく活用し、目標を特定し、共有し、共感を得ることに、時間を使おう。

メンバーの時間を消費してしまうことに対して、気にしすぎないようにする。狙いを説明すればわかってもらえるはず。

  • 上位からチームへの要求を徹底的に議論して、その意図を分解し、解像度を高めよう。その要求とメンバーそれぞれがやりたいこととの接点を見つけて、共感できる目標を設定しよう

躊躇せず、議論に上長を巻き込もう。

数値目標は、うまく立てられれば、推進力を生みます。メンバー全員が取り組む必要のある目標を必ず立てよう。
それでもはっきりしない場合は、仮説をたてて、ステークホルダーと議論してフィードバックをもらう期間自体を、当面の目標にしてみよう。

目標達成のための時間を生み出すために、「やること」と「やらないこと」を決めよう。

  • チームが動き始めたら、短期間でふりかえり、その期間で得た学びをシェアし、やり方を見直し次のタスクに活かそう

得た学びはチームで共有し、使えるようにしよう。
個別の業務は一人に任せるのではなく、ナレッジの移転が進むように、できるだけペアにしよう。

  • だれもが意見を出しやすい雰囲気づくりに気を配ろう

フラットな議論を促すために、あらゆる対話の機会で常に共同編集ツールを利用しよう。

  • マネージャーはより大きな成果を得るために、課題の解像度を高めることにフォーカスしよう

お客様、パートナー、上司などステークホルダーからのフィードバックを得るために、コミュニケーション機会を定期的に持ち、チームに共有しよう。そこから課題や目標の解像感を高め、より大きな成果へ結び付けよう。

  • 一から自分で考える必要はなく、フレームワークを利用しよう。


そうだ! フレームワークを使おう。


上記リストのほとんどは、インセプションデッキで解決できそうな内容です。今回は詳しく説明しませんが、リコーでは、組織運営でインセプションデッキをうまく使ってもらうためのテンプレートを提供しています。社内の読者の皆様には是非、利用して頂きたいと思います。

また、インセプションデッキを説明するサイトは数多くありますので、調べていただけるとよいかと思います。

インセプションデッキのフレームワークのイメージ


いかがでしたでしょうか? 少々特殊な状況だったかもしれませんが、多くのマネジメントの現場でも起こりうる問題もあると思います。皆様がこれから期初のスタートダッシュを決める際のお役に立てられれば、私の失敗もようやくこれにて成仏させることができそうです。合掌。

***

リコーでは組織全体でデザイン思考とアジャイルを取り入れた改革に挑戦中です。noteを読んでくださっている社内外の人たちと知見を交換できると大変嬉しいです。

これからも、デザイン思考とアジャイルの実践現場から、みなさんの役に立つ情報をお届けしていきます。
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