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富士通の「やわらかデザイン」に学ぶDX時代の企業風土改革【前編】

こんにちは、「みんなのデザイン思考とアジャイル」運営チームです。
私たちは「リコーアジャイル」を全社に浸透させるため、デザイン思考やアジャイルの学習&実践の場として、セミナーやワークショップイベントを定期的に開催しています。
 
今回は、「先駆者に学ぶ企業風土変革 富士通のDXを支える「やわらかデザイン」~リコーアジャイルとの共通点とは~」というイベントを開催しました。

富士通株式会社の全社変革コミュニティ「やわらかデザイン」発起人の加藤正義さんと、その中の取り組みとして社員同士がフラットに本音で話せる場「スナックまり」を立ち上げた日水真理さんのお二人をゲストにお迎えし、講演とトークセッションをお届けしました。

実際の活動事例やDX時代の組織風土の転換に必要な組織づくり、風土改革に必要な考え方など盛り沢山の内容でした。2時間以上のイベントでしたが、参考にしたいアイデアや考え方が詰まったあっという間の時間でした。


この記事ではイベントレポート前編として、お二人の講演をダイジェスト版でお届けします。
読んでいただいた皆さんにも、組織変革の参考としていただいたり、前向きなマインドを持ち自ら行動を起こすきっかけにしていただけると嬉しいです。

社内SNSを活用して企業文化を変える「やわらかデザイン」とは?


まず、富士通株式会社の加藤さんに「やわらかデザイン」の誕生経緯と成長の過程についてお話をいただきました。

新卒で富士通株式会社に入社後、開発部門、コーポレート部門、デザイン部門など様々な組織を経験。 現在はインハウスデザイナーをしながら、SVP東京の投資・協働パートナーや、中小機構TIP*Sの中小企業アドバイザーなど、複業にも挑戦中。
2011年頃から、ワークショップデザイナー/ファシリテーターとして、様々な組織やビジネスの課題解決を支援。特にコンセプトデザイン、ビジョンデザイン、アイデア創発、デザイン思考、組織開発といった分野を得意とする。
2020年から、富士通グループの営業職8000名がオリジナルのマインドマップe-learningコンテンツを受講、現在全社員が受講可能に。また、社内で立ち上げた全社変革コミュニティの参加者が3400名を突破(2023年8月現在)。アタマと組織をクリエイティブにする活動を日々研究・実践中。


元々、製造業に最適化された「縦割り」の組織だった富士通は、大企業病のようなどこか閉塞感のある雰囲気に悩んでいたそうです。そこで、「オープンマインド」と「スマイル」で社員がつながり、みんなで富士通グループを「やわらかく」「面白く」する実験・実践コミュニティとして、「やわらかデザイン」を2020年7月にスタートしました。現在は「やわデザ」の愛称で親しまれています。

スタートは、まず、2020年に全社DXプロジェクトであるフジトラ(Fujitsu Transformation)が本格始動したこと。IT企業からDX企業への転換を図るため、トップ自らがリーダーシップを執り、プロダクトやサービスを変えるだけではなく、それらを生み出す組織・プロセス・文化・風土の転換に至るまでの全社的な改革を開始しました。

その中で2020年7月に富士通のDXビジネスに貢献する部門として、加藤さんが所属する富士通デザインセンターが誕生し、全員参加型の改革を目指すためコミュニティを立ち上げることに。こうして誕生したのが「やわらかデザイン」です。

主な取り組み

 
やわデザでは「やわデザコミュニティ」という活動を通じて、デザインマインドの醸成やカルチャー変革を推進しています。コミュニティ内では年間100回以上の大小様々なイベントが開催されたり、様々な実験的活動が行われているそう。

主な取り組みとしては、「やわらかチャット」という富士通グループを横断するチャットグループをはじめ、テーマ(課題)を持った社員とテーマに関心のある社員をマッチングしてディスカッションを行う「やわらかセッション」、さらにこのあと詳しくご紹介する「スナックまり」などのユニークなものなど幅広く活動を行っています。

「やわらかチャット」では自由に会話するグループのほかに、「やわらかAIチャット」などさまざまなテーマ別のグループが発足するなど現在も進化を続けています。

昨年書籍化が決定した際にも「やわらか出版」チャットグループを立ち上げ、書籍タイトルや表紙デザイン、プロモーションのアイデア、内容のレビューなど出版に至るまでのあらゆることをメンバーで話し合い、作り上げました。

書籍は2023年5月に発売されました!
社内SNSを活用して企業文化を変える やわらかデザイン


他にも、自社だけでなく他社の変革を支援する目的で「パーパス」「心理的安全性」などテーマを決めて読書会を行う「あすよみDX」の取り組みや、「目的地は鬼ヶ島」のYouTubeチャンネルの運営等も行っています。

「桃太郎から学ぶ社会課題🍑目的地は鬼ヶ島」YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/@donburako_taxi/playlists


「目的地は鬼ヶ島」は、人も組織も社会も元気にすることを目的にスタートした、社会課題に取り組む企業向けにライブ配信を行うトーク番組です。

さまざまな社会課題を鬼や鬼ヶ島に見立てて、その解決に取り組む桃太郎(社会起業家)をゲストに迎え、彼らの取り組みやこれまでの人生経験などさまざまなお話を伺っています。
ちょっと距離が遠く感じる「社会課題」について気軽に学べるよう、タクシー運転手とその乗客が雑談するというバラエティ番組のような笑いの要素も加え、やわらかデザインしているオンラインイベントです。

個の想いが会社を動かす「スナックまり」の取り組み

 次に、やわデザの取り組みのひとつである「スナックまり」主催の日水さんに登壇いただきました。

 「スナックまり」とは、「まりママ」の愛称で親しまれる富士通株式会社の日水さんが立ち上げた、社員同士が組織の垣根なく個と個が本音で語り合える場です。今回のイベントでは、立ち上げの背景や現在までの経緯を詳しくお話しいただきました。

新卒から富士通株式会社へ入社、現在7年目。法人営業を4年間経験した後、新規事業の企画・実行の部門にて広報・PRの業務を担当。その後、データ活用のソリューションセールスを期間限定で経験し、現在はマーケティング本部に所属。
入社4年目にキャリアの悩みを発端に自主企画として「スナックまり」の企画を社内へ持ち込み、富士通グループ社員が交流できるオンラインスナックを開催。その後役員とのコラボウェビナーイベントなども実現し、「心理的安全性のパワースポット」と呼ばれるようになる。
2023年1月からは新たに「スナックまりPremium」という企画をスタートさせ、会社にリアルスナックを開店。富士通と顧客の垣根を取り払い、本音で語り合える場を企画・実践中!

なぜスナック?


「スナックまり」スタートのきっかけは、日水さん自身が組織で抱えていたモヤモヤにあったそう。実績が出なくて自分の居場所を感じられず、職場での評価=私のすべてと思ってしまい、「とにかくこの場所から逃げ出したい」と思った日水さんは、ゲストハウスに通うようになったそうです。
 
ゲストハウスでの多種多様な人たちとの対話を通して自分の居場所を見つけ、「こんな場所を自分でも作りたい」と、社外で一日店長のできるバーで場づくりを経験。それを社内でも展開したことで「スナックまり」が誕生しました。

これまでの取り組み
 
社内版「スナックまり」企画は「やわデザ」から始まりました。「やわデザ」ミートアップにてアイデアを話したところ、加藤さんや社内で協力いただいた方々の後押しもあり、やわデザでの「スナックまり」企画が実現しました。月1回程度開催するオンラインの飲み会形式の場づくりからスタートし、初回は10名の参加だったところから、最大で35名の方が同じ空間で顔を出して交流するコミュニティにまで成長しました。
 
そのあとSNSでCIOからの声掛けがあり、ウェビナー企画に発展。社内有志の企画・運営により、社内ゲストをお招きしたトークセッション形式のウェビナーを3回開催し、最大600名以上に参加いただき大いに盛り上がりました。
 
また、社内の場づくりだけではなくビジネスへの貢献を目的に、顧客と富士通の役員・社員が気軽に立ち寄って対話ができる場所として「スナックまりPremium」というリアルの場づくりも行っています。

日水さんは「スナックまり」を通して、自分の好きなことで周りの人も幸せにできる喜びを実感し、会社や組織への想いもポジティブに変化したそう。

日々自分自身がトライ&エラーを繰り返しながら挑戦し続けることで“個”の活躍を体現していき、みんなの挑戦も後押ししたい」と語っていただきました。

「やわデザ」活動フレーム

 
ここまで様々な活動をご紹介しましたが、やわデザではこのような活動のすべてを「楽しい」「面白そう」という雰囲気づくりによって社内改革につなげていく「ポジティブ変革アプローチ」のもと実施しています。

変革は嫌々やるものではありませんし、楽しくないと長続きしません。また、期間限定の変革だと参加できる人が限られたり効果も限定的になってしまいます。そこで、やわデザでは社内SNSを使うことで物理的な壁や時間的な制約を乗り越え、誰でも参加可能な仕組みづくりを行いました。
 
また、「お互いの顔が見える関係性をつくってコミュニケーションが活発に行われるようなコミュニティをつくりたい」という想いのもと、以前は掲示板のような役割しか果たせていなかった社内SNSを改革し、「交流型変革アプローチ」を実施しました。

多様なアイデア・意見・知識が混ざり合うSNSでの交流によって、ひとりひとりが固定観念や“現状維持バイアス”を突破して新しい行動を起こすことにつながり、その行動が組織全体に好影響を与えていくという、良い連鎖を生み出す仕組みを作り出しています。

コミュニティ拡大の要因

 
後半のトークセッションでは、「コミュニティが広がった要因は、ネーミングの要素も大きい」とお話しいただきました。

活動のひとつひとつに「やわらか~」という統一したネーミングを行うことで覚えやすくブランディングにもなりますし、「やわデザという愛称や、「やわらか」という言葉と同時にコミュニティの認知が広まり、受け入れられていく実感があった。言葉自体にも潜在的ニーズを満たす効果があったと思う」と語っていただきました。

トークセッションの様子は、イベントレポート後編の記事に続きます!

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リコーでは組織全体でデザイン思考とアジャイルを取り入れた改革に挑戦中です。noteを読んでくださっている社内外の人たちと知見を交換できると大変嬉しいです。
これからも、デザイン思考とアジャイルの実践現場から、みなさんの役に立つ情報をお届けしていきます。

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