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デザイン思考が日常になるための10のマインド チェックリスト

こんにちは、「みんなのデザイン思考とアジャイル」をリコーで運営している武田です。今回は、日常がデザイン思考になるための「マインド」についてお話ししていきます。

「みんなのデザイン思考とアジャイル」をはじめる前から、リコーにはデザイン思考を学ぶための支援をする「i.work」という活動があります。i.workは、以前のイベントレポートで講演者として登場した百瀬さんがリードする活動です。リコーのデザイン部門を長年率いてきた百瀬さんは、フレームワークだけではなぜか上手くいかないデザイン思考の課題に対応するため、長いデザインの経験と研究から「マインド10」をまとめました。

マインド10は、洞察・価値定義・解決・試行といったデザイン思考のフレームワークを感覚的に理解するための鍵となる、毎日意識すると良い行動指針といえるものです。日常をデザイン思考にするためのチェックリストにしてみてください。


「マインド10」チェックリスト

デザイン思考「マインド10」チェックリスト

1. 分厚く知る
2. まず受け入れる
3. 共感・想像する
4. 手で考える
5. 気づく(本質追求)
6. 価値を書く
7. たくさんアイデアを出す
8. 早く小さく失敗して改善
9. 多彩な人と関わる
10. 楽しむ


1.分厚く知る

デザイン思考の重要なプロセスに「調査・観察・ヒアリング・体験」があります。それ自体はとても重要なプロセスですが、得られた客観データを重視し過ぎずに、主観・五感・社会共有の知識を分厚く集めることが大切です。

客観データは計測可能なものをデータ化するもので、ものごとの裏に隠れている問題や欲求を見つけ出すためには、主観・五感・社会共有の知識が必要となります。デザイン思考は、この3つの知識からはじめて、仮説をたてて、客観データによって裏付けすることが多いです。

効率的に利益を得ようとすればマスを見て、n=1の意見は切り捨てがちですが、n=1は世界規模でみれば何十万人の意見の可能性もあります。ヒアリングで得た一見関係なさそうなフィードバックが、重要な潜在ニーズを示唆していることも珍しくありません。
これを顕在化させることがデザイン思考の面白いところです。


2.まず受け入れる

「調査・観察・ヒアリング・体験」をすると、多様な考え、不都合な事実、論理的ではない事実も出てきます。でも、いったん受け入れて、判断は後にすることが大切です。このようなプロジェクトの初期段階では、複雑さと混沌に身を置くことに慣れる必要があります。洞察のヒントは往々にして複雑と混沌に隠れていて、早まって整理すると消えてしまうからです。
 
解決手段を考える時も、バカみたいなアイデア、実行不可能なアイデアもいったん受け入れて、後から判断するとよいでしょう。そういったアイデアは可能性を秘めていて、新たな視点が加わったとき、そこからひらめきがもたらされることもあるからです。

普段、仕事をテキパキ進める優秀な人は、この混沌とした創造的なフェーズにおいて、無意識に情報を切り捨てていないか、気をつけたいですね。


3.共感する・想像する

「調査・観察・ヒアリング・体験」後、そこから得たエピソードや事実を自分の価値観で評価することなく、対象に共感し受け入れることが重要です。共感によって問題の存在に気づきやすくなるからです。

問題に気づくことができれば、その理由や背後にあることを想像し、仮説をつくれるようになります。共感と想像、問題の発見から原因の仮説の立案まで短時間で到達できるようになります。

もちろん、この段階の仮説は仮説に過ぎませんので、検証が必要になるのは言うまでもありません。


4.手で考える

「調査・観察」や「ワークショップ」といったインプットが次々にでてくるシーンでは特に、「気づき」や「感覚に触れた言葉」をすべて書き、そして描き、残すことが大切です。(会話中に発せられた「いい言葉」は書かないとすぐに記憶から消えてしまうのです。)

その先にある「洞察」は、書き出した言葉を深堀りし、他の言葉と結び付けることで得られます。会話から生まれた無数の言葉が可視化されると、言葉どうしが結びつき、思考が広がります。

そうした思考の連続の過程で生まれる解決手段は、雑でも何でもすぐに絵にして、手近な材料でプロトタイプを作り、触り、感じることで、より深く考えられるようになります。

絵や形は、言葉や文字では表せなかったこと、気づけなかったことを浮かび上がらせる力があります。人に見せることによって一気に多くの人を巻きこんで、多くの具体的なフィードバックを得られることができます。

結果的に早い段階で、大筋をつかみ、人がどう受け取るか、価値がありそうか、重要な情報を手に入れられるようになります。これが可視化やプロトタイピングの力ですね。


5.気づく(本質追及)

「調査・コンセプト・解決手段・検証」どの段階であっても、ものごとの本質を追求し、「気づき」を得て、新しい価値の種を生みだすことができます。気づきは段階を決めて集中的に考えるものではありません。

気づきを得るためには、五感の感度を高め、観察や体験から新たな知識を得て組み合わせ、深く思考し、俯瞰し、熟成する。焦りを受け入れ、気づきの訪れを楽しみに待つ余裕が必要です。

気づきは、対象に没頭している時、議論している時はもちろん、頭の片隅にそのことを置いておくと、散歩や寝起き、入浴といった気をぬいた瞬間に降りてくるもので、不思議です。


6.価値を書く

筋がよさそうな洞察/気づきを得たら、「価値」を必ず書き出すことが大切です。価値を捉えないまま考えた解決手段は、誰が得するのかわからない、ぼんやりしたものになりがちです。

平たく言うと価値は、誰かにとっての「うれしいこと」です。それは、肉体的/精神的にポジティブな性質をもつことだったり、真・善・美・愛・仁に関わることです。

「課題」や「問い」を見つけると、アイデアを考えやすくなりますが、課題の背景には、誰にどんなうれしいことをもたらすのか、必ず価値があるはずです。


7.たくさんアイデアを出す

解決手段、つまりアイデアは質を問わず、自由な発想で大量に出すことが大切です。「アイデアは既存の知識の組み合わせ」とは良く知られた話ですが、この原理を踏まえ、メソッドやフレームワークを利用しながら、議論やコミュニケーションから得た気づきに、持ち得る知識を組み合わせ、大量にアウトプットして、ひらめきを待ちます。

アイデアをいざ考えようとすると、「できたらいいな」のような実現性の低い「欲求」や「課題」、「気づき」から具体的な手段まで、HowとWhatが様々な粒度で入り混じりますが、気にする必要はありません。これらはすべてアイデアといって良いですし、新しいアイデアのための材料でもあります。この過程は、新しい組み合わせを得るための土壌づくりのようです。
 
良いアイデア・面白いアイデアが、考えたことのない要素の結合であるとすれば、土壌は豊かなほうがよく、そのアイデア群を眺めれば、実現性と新規性のバランスが良い落としどころを見出せるようになります。


8.早く小さく失敗して改善

「調査・観察」で対象(想定ユーザーに近い属性を持つ人)への理解を深め、「ワークショップ」で価値に迫ろうとしても洞察を得られない場合は、前のステップに戻る潔さも大切です。新たな気づきを得るために対象の生の言葉や一次情報に立ち戻り、異なる視点を見出し、すぐにやり直す立ち直りの早さは、アジャイル的でもありますね。

解決手段を思いついたら、すぐに言語化し、絵を描き、雑な試作を作る。すぐに自分で体感し、仲間や対象にシェア、問題がわかったらすぐにやり直す。何度も繰り返すことが最適解への近道です。コンセプトの検証は、「雑でいいので、すぐにやる」に尽きます。


9.多彩な人と関わる

チーム構成は、対象を含んだ多彩な特性 (年齢/性別/業種/職種/人種/
文化)を持った人々で構成することが理想です。

多様な価値観や視点がチームにあると、議論は自然と深くなり、本質にたどり着きやすくなります。一方で論理的な一致は難しく、共感を頼りに一致を図り、チームは常に揺れ動きながら前進することになります。

検証は、対象だけでなくその領域の専門家や精通した人にプロトタイプを見せ、意見を求めると有意義なフィードバックをもらえます。多面的な視点を得ることは常に大切です。


10.楽しむ

創造や洞察の楽しさは、様々な場面にあります。
リラックスした議論から良い考えが生まれるとき。何時間も没頭して考え続けるとき。手を動かし続けて集中しているとき。ちょっと難しそうなことにチャレンジしたとき。

創造のプロセスを楽しむことができれば、よい情報が入手しやすくなり、柔軟に考えられて、よりよい気づきが増えます。

自分と仲間が楽しめる環境と時間をつくりだしたいですね。

いかがでしたでしょうか? デザイン思考をよく知っている人もそうでない人も、改めて気づいたことがあればうれしいです。

ここに書かれていることの多くは、日常の仕事のシーンで少しずつ実践できることだと思います。意識的にこうした姿勢で仕事に臨むことで、少しずつ感覚が養われていきます。ぜひ試してみてください。

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