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組み合わせから浮かび上がる「洞察」の話 〜私のデザイン思考的考察〜

こんにちは、「みんなのデザイン思考とアジャイル」をリコーで運営している武田です。

今回のnoteは、以前に「失敗したワークショップの話」で触れた、リコー社内の管理職向けに行ったワークショップ内でのセッションについて、詳しくお伝えしていきたいと思います。

というのも、セッションでは「デザイン思考の中核にあるであろうクリエイティブの基礎力を高めたい」という高い理想を掲げて実施した結果、小難しくなってしまい、伝わらなかった……という失敗をしてしまったのです。

そのセッションを改良し、改めて今回のnoteで紹介していきたいと思います。リベンジです。


洞察と気づきの違い

私はデザイン思考でもアジャイルでも、そのあらゆるプロセスにおいて、最終的に「よりよい気づきを得る」ためにやっていると考えています。

観察やプロトタイプへのフィードバックから、得られたそのままの事実がとても重要な気づきだった、という幸運は起こり得ますが、大抵は、プロセスに散らばって存在する情報の断片をつなぎ合わせて、その関係性を読み取ることが必要になってきます。
そこで得られる「気づき」こそ、「洞察」だと思います。

きづき【気付き】
それまで見落としていたことや問題点に気づくこと。
どうさつ【洞察】
物事を観察して、その本質や、奥底にあるものを見抜くこと。見通すこと。

goo辞書

そして、顕在化した情報の組み合わせから見えてくる一筋の光明、「ひょっとして、こういうことじゃない?」という仮説もまた洞察の一部分、または洞察そのものと言えると思います。

洞察のメカニズム

ここからは、洞察のメカニズムを考えていきます。

私の愛読書に「アタマのやわらかさの原理」という書籍があります。この本では、組み合わせによって一つの対象から様々なメッセージを引き出す事例と、そのメカニズムが紹介されています。詳しくは是非読んで頂きたいですが、今回は本でも触れられている例にならい、そのメカニズムを紹介していきます。

1枚の写真に他の写真を組み合わせることで、発せられるメッセージが目まぐるしく変化する様子を感じてもらいたいと思います。

まずは、一つ目の写真の組み合わせです。

A・B2枚の写真からは、40年ほど前に音楽メディアの王だったレコードから現代の王であるストリーミングまでの変遷を感じ、音楽鑑賞のスタイルの変化をメッセージとして受け取ることができます。

他には、かつて音楽シーンの重要な要素だったジャケットのアートワークというカルチャーが失われつつある、というメッセージも引き出せるかもしれません。

では次に、別の写真の組み合わせを見てみましょう。

写真Aは先の事例そのままに、新たな写真Cを組み合わせて、AとCの関係性を探ってみます。

AとCの写真からは、デジタルネイティブの現代の若者の間でアナログの魅力にひかれる人が増えている、というメッセージを私は引き出しました。

あなたはどんなメッセージを引き出しましたか? 

2つの組み合わせ例からわかることは、同じAの写真でも組み合わせる写真によって全く異なるメッセージを引き出すことができるということです。当然といえば当然ですが、改めて見るととても面白い現象です。

この本の著者の松永光弘さんは編集者をされている方です。
本の中では、「編集という営みは、組み合わせによって(関係性を明確にして、届けたい)メッセージを引き出すこと」と述べています。メッセージが意図通りに届くように、コントラストが明確な写真を選択し、関係を作り出しているということです。

一方で、デザイン思考のプロセスで扱う対象は、様々な雑多な断片情報です。

断片を組み合わせてどんなメッセージを受け取れるか?見えてくるまで対象を次々に変化させて試していくことが、デザイン思考的な営みといえるかもしれません。編集とは逆のプロセスといえます。

どちらにしても、この関係性を作り出し、そこで浮かび上がるメッセージを読み取る力が洞察のメカニズムと言えると思います。

洞察の精度をどう高めるか?

同じ対象を見ていても、受け取るメッセージは人によって様々です。

編集の営みでは、なるべくメッセージがブレないように一般常識でわかる関係の明確さを意識的に作り出していきますが、デザイン思考のプロセスから生まれてくる対象は、そうはいきません。

組み合わさるかどうかもわからない対象同士のいわばワイルドな関係から、いかに面白いメッセージを受け取れるか、その才能は個人の知識量、その領域の深さに依存していると言わざるを得ません。元も子もない感じですが、それはどうしようもない事実です。

もし私がレコード全盛時代にアートワークがシーンに大きな影響を与えていた、という知識が無かったら、先の事例のようなメッセージは受け取れなかったでしょう。
最終的に洞察の質は、目に入った情報と個人の知識との組み合わせによって決まってしまうのです。

それゆえに、洞察の精度を高めるためには、知識の幅と量を拡げる日々の努力が必要になってくるのですが、限界があります。そこで、自分の知識が深い領域、興味をもって取り組める領域に引き込んで考えてみる、というやり方が、案外正しいとも思えるのです。

皆さんはどう考えますか? 

***

本noteではこれからも「デザイン思考」「アジャイル」への取り組みをご紹介していきます。またコメントやフィードバックをいただけると嬉しいです。

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「みんなのデザイン思考とアジャイル」運営の武田



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