「アジャイル」という言葉や「変化」を苦手に感じる方にこそ知ってほしい、ゆるくはじめるアジャイル
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「アジャイル」という言葉や「変化」を苦手に感じる方にこそ知ってほしい、ゆるくはじめるアジャイル

リコー みんなのデザイン思考とアジャイル

今や、ソフトウェア開発シーンでは当たり前のように語られている「アジャイル」という開発手法。近年は、開発以外の文脈でも活用されるようになってきました。

リコーにおいても、アジャイルは開発者に限ったものではなく「新たな価値を創出するために必要な、基本的なスキル」と位置付けています。

その一方で、アジャイルに対して、よく目にする言葉だけれど「わかるようで、わからない」「開発手法だから私には関係ない」「なんだか苦手」という意識を持つビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。

そこで今回は、リコーのアジャイルチームの3人に、アジャイルについてわかりやすく教えてもらいました。

アジャイルは「カイゼン」に対する新たな向き合い方

——アジャイルがいまいち理解しにくいのですが…わかりやすく教えてくれませんか?

田中:製造業であるリコーのメンバーがアジャイルを理解するには、「カイゼン(改善)」という言葉を活用するのが、身近な表現で耳馴染みがいいかもしれませんね。

私は、アジャイルというのは「『カイゼン』に対する新たな向き合い方」だと理解しています。

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▲田中 諭(たなか さとし)/デジタル戦略部 カスタマーサクセス推進センター DX価値創造室 室長
2003年リコー入社。複合機コントローラエレキシステムエンジニアとして設計開発からマネジメントに従事。2019年より5G通信を切り口に社会変容への適応を構想・仕掛けるプロジェクトチームリーダーに就任。以降、リーンスタートアップ、アジャイル開発手法を取り入れたビジネスデベロップメント、組織マネジメントに奔走している。2021年4月より現職。

田中:みなさんご存知の通り、「カイゼン」は日本の製造業において生産性や品質の向上などを目指す過程で生まれた言葉です。私たちリコーも、オフィス機器を製造販売する過程で、より良い製品を提供できるよう、カイゼンを実施してきました。

カイゼンを当たり前に実行してきたリコーにとってアジャイルは、実はそれほど馴染みにくいものではないと感じています。

——では、これまでと何が変わってくるのですか?

林:従来と異なることのまず一つ目が、カイゼンを行うサイクルです。

たとえば、かつての複合機開発現場では、半期や一年の単位で開発を実行してカイゼン サイクルを回すのが一般的でした。アジャイルの場合は、二週間程度の短い期間でサイクルを区切り、その期間で気づきや学びを得たらフィードバックして、すぐ次の行動に活かして行きます。

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▲林 貴彦(はやし たかひこ)/デジタル戦略部 DX推進グループ シニアスペシャリスト
1999年リコーに入社。ソフトウェアエンジニアとして複合機の開発及びチームマネジメントに従事。その後、複数の商品企画や新規事業の立ち上げに携わりプロジェクトをリード。現在も事業支援をしながら、DX及びアジャイル推進活動に奔走している。

林:二つ目が、目標や歩み方を「途中で見直しできる」ことです。

アジャイルの世界ではこれを「むきなおり」と言って、”ふりかえり”に加えてこの”むきなおり”も重要視されています。

これまでは、半年や一年前に立てた目標を途中で変更することは稀だったと思います。その一方でアジャイルでは、歩む過程での気づきや学びを鑑みて、立てた目標のまま進むのか、または変更するのか、チームの向かう方向性について随時検討していきます。

三つ目が、ふりかえりとむきなおりの「言語化」です。

プロジェクトをアジャイルに進めていく上では、見える化することが重要で、プロセスを可視化できるようにしたり、出来事や考え、気づきなどを書き出したりして言語化していきます。

田中:気づきや失敗を次に活かすという視点では、本質的には変わらないんです。それを言語化しながらクイックに行うことに、大きな意味があるのだと理解しています。

それが、アジャイルという言葉で表現された途端に、「ソフトウェア開発手法でしょ?」とギャップが生まれたり戸惑いが生まれたりして、理解が進みにくいのが悩みどころです。

クイックなカイゼン活動をしていくことの合言葉がアジャイル。そんな風に理解してもらえるといいのではないでしょうか。

ポイントは、チームでやることと、ちゃんとしすぎないこと!?

——そうしたアジャイルを実践するなかで、これまでと違いを感じている点はありますか?

永田:僕自身がアジャイルを実践していて感じているのが、以前よりもポジティブな側面が強いことです。

ふりかえりを行う際に、過去の良くなかったことやできなかったことばかりにフォーカスするのではなく、良かったことにも着目して評価していくのは、これまでとは異なる点ではないでしょうか。

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▲永田 拡章(ながた ひろあき)/デジタル戦略部 DX実行グループ シニアスペシャリスト
2006年リコー入社。複合機の組込みソフトウェア開発に従事し、主に小型機種における用紙搬送などのメカトロ制御ソフトを担当。2019年より5G関連プロジェクトチームにおいて新規事業開発やプロダクトオーナーを務め、現在は新規価値創造活動および支援ツール開発に従事。

永田:開発者にとってのふりかえりというのは、製品に何か問題や不具合が発生した時に、「なぜそれが発生してしまったのか?」「どうすると良かったのか?」というように、過去の“良くなかったこと”にフォーカスするケースが多いように感じます。

実際に私自身も、複合機開発で不良不具合が出てしまった時に行っていたふりかえりが強く印象に残っていて、あんまりいい思い出がないという…(苦笑)

一同:(笑)

田中:次に問題を起こさないためにふりかえりを行うという習慣が、きっと染み付いていますよね。開発者の場合は特に、ふりかえりというものに対していい思い出がない人が多いかもしれませんね。

——アジャイル的にふりかえると、なぜポジティブな側面にも着目できるのでしょう?

永田:その背景には、個人ではなくチームで進めていくことが関係していると思います。

アジャイルのやり方は、みんなで事実を書き出すというプロセスからはじめていきます。もちろん見直すべき点も見えてきますが、みんなでワイワイやることで「良いところがあるならそれは継続していこう」という雰囲気や意識が生まれやすいんです。

従来は、一人でふりかえってレビューしてもらうという点ではある意味チームでしたが、アジャイルは全体を通してチームで行います。

もちろん一人でもアジャイル的活動はできますが、チームで行ってこそ真価が発揮される気がします。

——チームで行っていくことが一つポイントになるのですね。

田中:あとは、ふりかえりって、ちゃんとやろうとしすぎないこともポイントかもしれません。

——!?それはどういうことですか?

田中:たとえば、製品開発は数年かかることもあるのですが、その場合ふりかえりが、その少し長めの期間の活動の、部分あるいは全体をふりかえることになります。

そうするとふりかえるべき期間が長くなるので、時間がかかる上に、その行為に慣れていないことで、やり方やフォーマットの検討など本質的ではないことに意識がいってしてしまって、いつの間にかふりかえり自体が仕事になってしまうんです。

だからといって決して雑でいいと言っているわけではないですが、短期間で区切って、クイックにふりかえりを実行して次のステップに進んでいくことがすごく大事なので、そういう意味で、ちゃんとやろうとしすぎないことも一つのポイントだなと思っています。

新たな仕事に向き合う上でのヒント

ーーアジャイルは、仕事の中のどんなシーンで活用するといいのでしょうか?

林:すでに問題なく進行していて見直す余地のない仕事や、計画達成できる仕事の場合には、アジャイルを無理に取り入れる必要はないと思うんです。

ただ、いまは変化の激しい時代。予定通りに進まないことや、うまくいかないケースが出てくると思います。
うまくいかないものをそのまま実行し続けても意味がないので、何か変化を加える必要がありますよね。

今のやり方に手詰まり感を感じているならば、一度アジャイルを取り入れてみる価値はあるのかなって思います。

田中:林さんが言うように、アジャイルがすべてではないし、アジャイルの仕事の進め方をすると仕事が必ずうまくいくというほど短絡的じゃないんです。

でも、アジャイルを取り入れることで、何かそこにヒントが見える可能性はあるのかなと。実際に、身をもって体験する出来事がありました。

——どんなアジャイル体験をされてきたんですか?

田中:私がはじめてアジャイルと接点を持ったのは、デジタル戦略部が発足した直後の2021年の5月頃。

新たな組織、仲間、パートナー、ミッションが加わり、話は次から次へと大きくなっていくなかで、ミッションは走りながら決めていく必要があり、このままではまずいなと危機感を覚え始めていたころでした。

なんとか前に進めるべく、市谷さんサポートのもと、まずはタスクを書き出して、ツールを使ってバックログを積んでいくことからはじめてみることに。
期間を区切って、「今月はこれだけやってみようぜ!」というように、チームでひとつひとつクリアしながら進めていきました。

正直最初の頃は、「これでいいのだろうか?」という感じでしたが、1ヶ月くらい続けてみると、仕事のペースがつかめてきたような感覚を覚えました。

それが正解だったかどうかはわかりませんが、仕事の見える化、強制的ロールプレイ、見よう見まねのふりかえりは、困っていたときだからこそ、形にこだわることなく取り組んだのがよかったのかもしれません。

そこに至るまでも、5G関連プロジェクトに携わるなかで、ゴールの見えない道を歩み続けてきた過程があったことで、アジャイル的な仕事の進め方の意義がより一層感じられたと思いますし、私にとってアジャイルとの出会いは大きなものでした。

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「みんな」で実践することで「集合知」へ

——田中さんが関わってきたプロジェクトのように、今後はゴールが決まっていない仕事に取り組む場面が増えていきますよね。

田中:実はリコーでは数年前から、社内副業制度といって、直属の上司の承認を得られれば、最大20%まで他部署の業務を行うことができる制度があります。

でも、何でも自由に選択してやっていいと言われると、逆にどうやっていいのか分からないですよね。そこに決まりがあるわけではないので、取り組むとしても自己流になってしまいます。

そうすると、せっかくいい取り組みをしたとしてもそのプロセスが残らず、独自で学びを進めることでナレッジも属人化してしてしまいます。それって、組織にとってはすごくもったいないことで。

リコーは、それぞれの学びを形式知にして集合知にしていきたいんです。

——集合知にするという面からも、チームで実践することの重要性が見えてきますね。

田中:そうですね。あとは、チームとしてベースとなる共通認識を持ちたいと考えています。

野球でも、球の投げ方やバットの振り方に基本があるように、リコーがデジタル人材を強化していく上でも、そのベースとなるものが必要です。

リコーグループの人材創出の方向性を示す以下の図において、全社員が共通で持つべきリコー社員としてのあり方と、強化していきたいデジタル人材、その境目にデザイン思考とアジャイルを配置しているのは、そうした意図もあります。

リコーグループの人材創出の方向性の図
リコーグループ統合報告書2021 p36より抜粋

田中:こうした活動のなかで得ていく実践知が集合知になって、会社の強さになっていくといいのかなと思っています。

リコーの仕事に寄り添ったアジャイルのあり方を

——今後、アジャイルチームとしては、どんな活動をしていきたいと思っていますか?

林:今、社内にアジャイルを普及する上で課題だと感じているのが、みんなが共通で活用できるツールを持てていないことです。

当然すべての仕事にマッチするツールを実現するのは難しいですし、テンプレートに当てはめればうまくいくとも思っていないですが、すべてではないものの部分的には当てはめられる所があるはずで、それをツールでなんとか実現できないかと考えています。

林 貴彦の画像

永田:まだまだリコー社員に寄り添い切れてないという課題意識が、チームにはありますよね。

私や林さんの場合は、プロジェクトを通してアジャイルへの最初の一歩を踏み出せたのですが、その実践の場が社内に少ないのが、現状だと思います。

プロジェクト内で実践できると、わからないことを気軽に相談できるので、諦めずに続けやすいです。実際に私も、教えてもらいながらアジャイルを実践することで、身につけることができました。でも、あまりにもわからないことが多すぎると、継続するのが難しいんですよ。

そうしたギャップを補完できるよう、情報交換したり実例を聞いたりできる場としてコミュニティを設け、実践できる場としてイベントを実施していますが、その背景には、小さなことでも気軽に相談できる場をできるだけ多く作りたいという思いがあります。

永田 拡章の画像

永田:開発以外でのアジャイルは、世の中にもまだまだ事例が少ないのが実情で、学べる場も限られています。

だからこそリコーでは、集合知につなげて、うまく蓄積して、組織の資産にできたらなと思っています。

永田さん田中さん林さんの画像

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