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正解のないDXにどう立ち向かうか。「みんなのデザイン思考とアジャイル」チームが目指すところ

前回のインタビューでは、チームリーダーでデザイン思考を推進する武田さん、アジャイルを担当する林さん、DXエグゼクティブの市谷さん3名に、リコーのDX戦略の始まりと、その背景にある、リコーのデザイン思考やアジャイルへの歩み、「みんなのデザイン思考とアジャイル」チームの誕生ストーリーを伺いました。

集まるべくして集まったこの「みんなのデザイン思考とアジャイル」チームメンバーたちは、今後どんなゴールを目指して歩んでいくのでしょうか。そしてそこには、どんな思いがあるのでしょうか。

後編となる今回は、チームが見据える先やそこにかける思いの丈を語ってもらいます。

※今回のインタビューは後編です。前編をまだお読みでない方は、ぜひ前編も覗いてくみてださい!

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“はたらく”歓びは、一人ひとり違うもの

——「みんなのデザイン思考とアジャイル」チームとして歩みを始めたわけですが、現在どんな目的地やゴールを見据えているのですか?

林:リコーのDXは「“はたらく”に歓びをもたらすため」の取り組みなのですが、じゃあ“はたらく”に歓びを感じるってどんな状態だろう?と考えた時に、自分でやりたいことを獲得していくことだったり、新たな機会を得てそこで活躍することだったり、それは人それぞれ違うと思っていて。

ただ、その状態に辿り着くための考え方やあり方として、僕たちはデザイン思考とアジャイルが有効だと思っているし、そこに価値を感じてもらいたいと考えているんです。

ですから、それらを自然と実行してもらえる状態にすること。それが一つの目標でありゴールなんだと思います。

林貴彦の画像
▲林 貴彦(はやし たかひこ)/デジタル戦略部 DX推進グループ シニアスペシャリスト
1999年リコーに入社。ソフトウェアエンジニアとして複合機の開発及びチームマネジメントに従事。その後、複数の商品企画や新規事業の立ち上げに携わりプロジェクトをリード。現在も事業支援をしながら、DX及びアジャイル推進活動に奔走している。

武田:そうそう、はたらく歓びって人それぞれでいいんですよね。デザイン思考とアジャイルを習得して、全員が自律的に事業を立ち上げるような人になってほしいというわけでは決してなくて。

ただ仮に、一部の人が自律的に事業を立ち上げるという行動を起こした時に、周囲の人が同じ思想をベースに持っていると、ビジョンに向かって走っていけるスピードは早くなるはずです。

リコーは、そうした土壌を持つ組織になることを目指しているので、リコー社内の共通理解として、「デザイン思考とアジャイルのマインドセットを持っているのは普通だよね」という状態にするのが、僕たちが実現したいことですよね。

武田 修一の画像
▲武田 修一(たけだ しゅういち)/デジタル戦略部 CSクリエイティブグループ リーダー 兼「みんなのデザイン思考とアジャイル」チームリーダー
2002年リコー入社。デザイナーとしてWeb UIデザイン、複合機デザインを中心としたサービス及び製品デザインに従事。その後デザイン活動の幅を広げ、数々の新規事業やアクセラレータープログラムを支援。デザイン思考の普及を推進しながら、2021年4月より現職。

——デザイン思考とアジャイルが普通になったら、このチームが必要なくなるなんてことも起こってきそうですね。

林:そうですね。チームが解散することだったり、あり方が変わることだったり、デザイン思考とアジャイルが浸透する先には、間違いなくチームにも変化があると思います。

アジャイルにやるなら中長期の目標は作らなくてもよいという考えをする方もいますが、やっぱりちゃんと目指すべき姿を作った上で、積み上げていくことが重要で。試してみてうまくいけばそこに向かって突き進めばいいし、違ったなら一度立ち止まって「ふりかえり」から学びを得て、次はどう進むか「むきなおり」をして調整していけばいい。

このチームもそんな風に進んでいくのだと思います。

正解のない道を歩む、そこに待ち受ける苦悩

——市谷さんは数々のDX推進経験がありますが、リコーのような大きな組織がDXに取り組む場合、どんなことで苦労されることが多いですか?

市谷:組織の大きさゆえの難しさは、当然ありますよね。

リコーの場合も、動かしたいグループ全体の組織規模が大きいのはもちろん、動かす側の私たちが所属するデジタル戦略部も大きい組織になっています。

でっかい組織同士が話をするだけで、コミュニケーション数とそれにかかる時間を要してしまいますし、意思疎通や認識合わせも容易ではないです。

でも、そのコミュニケーションを怠ると、誰しもバラバラになりたいわけじゃないのに、結果的にバラバラになってしまう状況を招いてしまうんです。リコーはそうならないよう、いまはそのすり合わせを人の手を介して丁寧に進めています。

市谷 聡啓の画像
▲市谷 聡啓(いちたに としひろ)/デジタル戦略部 CDIO付DXエグゼクティブ・株式会社レッドジャーニー 代表
サービスや事業についてのアイデア段階の構想から、コンセプトを練り上げていく仮説検証とアジャイル開発の運営について経験が厚い。プログラマーからキャリアをスタートし、SIerでのプロジェクトマネジメント、大規模インターネットサービスのプロデューサー、アジャイル開発の実践を経て、自らの会社を立ち上げる。それぞれの局面から得られた実践知で、ソフトウェアの共創に辿り着くべく越境し続けている。

武田: そうしたコミュニケーションの難しさというところが、この活動の根本にはあるのかなって思っていて。それを解消するために、チームがあるとも思っています。

——武田さんはチームのまとめ役でもありますが、どんなことに苦労されていますか?

武田:前回お話ししたように、デザイン思考の場合、もともと活動していたメンバーとともにいまの活動に繋がっているので、合意形成やコミュニケーションで苦労することはほとんどありません。

ただし、今後は多くの仲間が必要で、たくさんの協力を求めていくことになります。

そうなった時、目的と手段の整合性や、なぜやるのかという理由の納得感がなければ、人は動かないと思うんです。ですから、伝わるように言語化して納得できる形でお伝えしていく。そうしたところはきちんとやっていかなくては、と思っています。

…と言いつつも、実際すでにいろいろな意見や感想をもらっていて、ごもっともだと感じることも多いですし、気づけていなかったことを認識するきっかけをもらっています。改善できることは走りながら対処していくので、一緒に考えていただけたら嬉しいですし、そういう機会も作れたらいいなと思っています。

市谷:DX自体に正解がないので、そうした苦労も多いですよね。

実際に講演などを行うと、「DXって結局どうすればいいんですか?」という質問をよくいただきます。その質問からもわかるように、誰もが迷いながら「正解のない道」を進まなくてはいけないわけです。

そういう意味でも、リコーの歩みは、日本企業におけるDXの重要サンプルになります。苦労のひとつでさえも、ありのままにお伝えしていくことは、日本社会への大きな貢献になるんじゃないのかなと思っています。


リコーが変わっていくために必要なのは、一緒に学んでいく「仲間」

——「仲間集め」というキーワードが出てきました。チームとしては、具体的にどうやって仲間集めをしていこうと考えていますか?

林: ビジョンばかりを語る「意識の高いやつ」だとか、対話するにも空中戦で終わってしまっては意味がないですからね。

まずは草の根活動的に共感してくれる仲間を一人ずつ増やしていって、その人がデザイン思考やアジャイルを学んで所属チームに帰っていったときに、滲み出しとしてその価値が広がっていく。そういう運用のやり方が遠回りに見えて、一番着実に進む方法なんじゃないかなと考えています。

このnoteとリコー内部でのコミュニティ活動から、まずは「流れ」と「場」を作っていく動きをはじめています。

また、コミュニティで仲間作りをするにしても、そのコミュニティ自体が持続的に活発な場でないと誰も入ってこないですし、入って学びを得たとしても、1人だけでは続けられないです。そのためのエネルギーをいかにコミュニティに注入し続けるかというところを、今後施策として練っていく必要がありますよね。

武田:そうですね。たとえば、勉強会を開催して、自分と似たような感じの人が、ちょっといい成果を出したり理解度の高さを表出したりすると、強い意識づけの機会になりますよね。そういう学ぶきっかけを意識的に作っていくのも、コミュニティが担いたい機能のひとつです。

実を言うと、僕自身は本当に偶然デザイン思考との関わりが始まったんですね。

学んでいる最中は、全体感を掴めずモヤモヤしてましたが、教えられたメソッドをただ忠実にやっているうちに、これまでのデザイン実務との関係が見え始めて、抽象的にとらえられるようになり、本質的な理解が進んだ感覚がありました。

そうやって、最初は苦労するかもしれないことをわかっているからこそできるサポートや、学びの機会を、一人でも多くの方に提供できたら嬉しいです。

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デザイン思考とアジャイルを、まずは一緒にやってみませんか?

——最後に、どんな思いを持って今回のプロジェクトに臨んでいるか、それぞれの気持ちを聞かせてください。

林:武田さんの実体験があるように、僕もアジャイル開発という名の下での経験があるわけでもないですし、スクラムマスターなどのアジャイルに関する資格を持ってるわけでもないんです。

市谷さんに「スクラムマスター取った方がいいですかね?」って聞いてみたら、「そんなのいらないです。まずはやってみましょう」って後押ししてくれたんですよね。

それでいま僕はここに居続けているわけで、市谷さんが僕にしてくれたように、「ちょっとやってみようかな」って思う人を繋いでいく、そんなチームでいたいですね。

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市谷:これまでのお二人の話からもわかりますが、リコーの中の人にとってみれば、これはすごく大きなチャレンジで、しかもそう訪れることのない非常に貴重な取り組みなんです。

でもそれがストレスになり、プレッシャーになってしまったなら、きっとそれは続けられないでしょうし、やってみて可能性を感じられなかったら、やる気も喪失してしまうはずです。

そうならないよう、ポジティブに実感をもちながら進められる活動にしたいという思いは強いです。

武田:経験豊富な市谷さんがそうしたサポートしてくれるのは、リコーにとってすごい心強いことです。

僕も林さんもいまの役割を担っていますが、デザインシンカーやスクラムマスターの大御所みたいな感じでは決してなくて。だからこそ、一緒に挑戦しながら、失敗もしながら前に進みたいと思っているんです。

そうした思いがあるからこそ、
「まずは一緒にやってみませんか?」

この一言が、一番伝えたいメッセージですね。

林:本当に、一緒にやってみませんか?の一言に尽きますよね。

繰り返しになりますが、僕らってリコーのハブ世代なんです。
複合機で儲かっていた時代を知る先輩たち、その時代を知らない後輩たち、そのちょうど真ん中にいて、どちらの気持ちや価値観も理解できます。その一方で、間に挟まれてモヤモヤする気持ちもある。

モヤモヤしてその状況が嫌になる時もありますが、とはいえやっぱりリコーの好きなところもあるんですよね。

だからこそ、「リコーを変えねばならぬ」

そうした気持ちで取り組んでいますし、原点や言葉が違えど、チームにいるメンバーが持つのはきっと共通の想いだと思います。

来週は、デザイン思考についてのインタビューをお届けする予定です!
ぜひ私たちのnoteをフォローして最新情報を受け取ってくださいね。


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