ヒアリング力を一歩前進させるマインドとメソッド
こんにちは、「みんなのデザイン思考とアジャイル」運営チームです。
私たちは「リコーアジャイル」を全社に浸透させるため、デザイン思考やアジャイルの学習&実践の場として、セミナーやワークショップイベントを定期的に開催しています。
今回は「自分のヒアリング力を一歩前進させる!効果的なユーザーヒアリング実施のためのマインドとメソッド」というイベントを開催しました。
ユーザーヒアリングは、市場調査や新規事業の価値検証、商品リリース後の改善など、さまざまなシーンで行われており、活用度の高いツールのひとつです。
しかし、重要性はわかっていても「難しそう」「上手く喋れるか不安…」「どのようにやったら効果的かわからない」という気持ちから、なかなか実行に移せない方も多いのではないでしょうか。
このイベントでは、ユーザーヒアリングに対する心理的ハードルを下げ、ヒアリング力を前進させるマインドとメソッドをお伝えしました。
イベント後、参加者からは
「交渉や前後の雑談時にも活かせそう」
「要点が分かりやすく、体験談などもあり理解が進んだ」
といったたくさんの感想や気づきの声をいただきました。
この記事を読んだあとのあなたも、「早速試してみよう!」とヒアリングに対して前向きにチャレンジする気持ちを持っていただけると嬉しいです。
はじめに 効果的なヒアリングのための3ステップ
まず、ヒアリングと聞くと「とりあえず聞きたいことを聞けばいいんじゃない?」と思うかもしれません。もちろんそれも間違いではありません。
しかしヒアリングの効果を高めるためには、限られた時間の中で相手の本音を引き出し、目的に沿って適確に情報を集めることが重要です。ここでは、より効率的で効果の高いヒアリングを行うための3つの手順をご紹介します。
【ヒアリングの3ステップ】
慌てないために:ヒアリングの目的と計画をたて、準備する
相手の気持ちになってみて:ヒアリングを実施する
せっかくの情報を活かせ!:ヒアリング結果を分析する
今回はこのヒアリングの3ステップに沿って、それぞれの具体例やポイントを詳しく解説していきます。
では、ひとつずつ見ていきましょう。
1. 慌てないために:ヒアリングの目的と計画をたて、準備する
具体的な準備方法に移る前に、まず前提として知っていただきたいことは、効果的なヒアリングのために一番重要なことは
「この人になら話してもいい」という安心・信頼を得ること
です。
ヒアリングする際、仮説に対しての意見を聞くことができれば十分ではないかと思われる方もいると思います。
しかし質問を受ける側になった時には、なんとなく空気を読んで相手の欲しそうな回答をしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。ヒアリングをプランする際、人は相手によって答えを変えるということを頭に入れておかなければいけません。
聞く側の人はそのことを理解し「相手にどういう気持ちになってもらうか」を考えた上で、事実、本音、感情を引き出すヒアリングを目指していきましょう。
1−1 仮説を立てる
とりあえずテーマに沿って広く質問をしてみるよりも、「この人にはこんな課題があるのではないか」といった、仮説を立てておきましょう。
ヒアリングをスムーズに行うことができると同時に、より具体的な情報を得ることができます。仮説は以下のような公式にあてはめると考えやすいです。
1−2 答えではなく、判断材料になる情報を広くそろえる
仮説を立てた後は、それを検証をするために何を聞くべきかを考えていきます。
ほとんどの人が、初対面の相手から「私たちが開発したこの〇〇、どう思いますか?」と聞かれたら、「素敵ですね」「美味しそう」など、良い所を探して答えてしまいがちです。
残念ながら、この回答は本心ではないことも多いので、ほとんど参考にはなりません。
効果的なヒアリングのためには、相手の普段の行動、背景、価値観など総合的に判断できる情報を広く揃えることを意識した質問設計がポイントです。
感想や意見ではなく「事実」をもって総合的に分析をしていくことこそが、ヒアリングの意味であり、そうすることで自分たちの判断や方向性が確実になっていきます。
また、判断材料となる情報を集めるときに意識していただきたいことは、仮説を証明するためのヒアリングをしない、ということです。
ヒアリングでの事実を元にして新たな気づきから次のアクションを決めることを心がけましょう。
1−3 ヒアリング計画の流れとポイント
ヒアリングの計画と準備は、以下のステップを踏むとスムーズです。
ポイントは3つあります。
Point①本音を引き出しやすい質問にする
先ほども例にあげたように、相手には建前があることを理解して本音を引き出せるような質問を考えます。
具体的には、過去の体験や事実、感情を明確に聞くことと、誘導尋問にならないような質問にすることです。
Point②聞く順番は答えやすい順番に
普段の生活や行動など、相手が答えやすい質問から行い、場が温まったところで徐々にサービスやアイデアに関することを聞くようにすると良いでしょう。
Point③質問の優先度を決める
答えやすい順番で聞きながら、聞くべきことは漏らさずに聞くことができるように、事前に質問の優先度を決めておきます。
質問表を作成する中で“必ず聞きたいこと”をチェックしておいて、ヒアリングの途中で確認するようにすると漏れがなく確実です。
2. 相手の気持ちになってみて:ヒアリングを実施する
ヒアリングはまさにライブ!実施する際のコツをいくつかお伝えします。
実施のコツ①:
ヒアリングをする際はできるだけ2名で行い、それぞれ「話す」「書く」に集中するように役割分担をします。
ヒアリングの開始時はまず目的を話し、回答者の不安をなくすように心がけましょう。
以下のような定型文を作っておくこともおすすめです。
話しやすい環境をつくるために、聞きたいことに加えて「無理せずお話しいただける範囲で」と相手に配慮した言葉を先に伝えておくと効果的です。
実施のコツ②:
ヒアリングで話す時の大事なポイントは、相手に話をリードしてもらい、気持ちよく話してもらうことです。
聞きたいことから多少話が逸れてしまっても、そこからその人が普段大事にしていることなどを知るきっかけになる場合もあります。「今のお話はどのようなきっかけで思い出しましたか?」と質問していくと、潜在的なニーズの発見にもつなげることができます。
その時、相手をよく観察し、感情をとらえることを意識してみてください。「事実」をとらえた上で、「その時にどう思ったのか?」をあわせて聞いておくと、とらえ方のズレがなくなります。
実施のコツ③:
こちらが意図したものを言ってほしそうな態度を示すと、相手は期待に応えて質問者に合わせた回答をしてしまうことがあります。こちらが相手をよく観察しているように、自分も「相手に見られている」自覚を持つようにしましょう。
もちろん、姿勢や服装を正す、相槌をうつ、目線を合わせる、リモートでは特にリアクションを大きくするなど、見た目や態度から相手が話しやすくなる工夫をすることも大切です。
実施のコツ④:
メモの取り方のポイントは、あとの分析をしやすくすることを心がけます。
3. せっかくの情報を活かせ!:ヒアリング結果を分析する
ヒアリングで得られた情報を十分に活かすために、分析のパートも重要です。
ここでもいくつかコツを知っておくと、後々の価値検証がスムーズになります。
分析のコツ①:
チームの全員が参加して臨場感を共有すること、データはできる限り生データを確認することが重要です。
都合のいい部分にだけ記憶が偏ってしまわないように、できるだけ早く振り返りの場をセッティングしましょう。またどんな雰囲気や感情で発言したのかがわかるように、できるだけ録画した動画等があればそれを確認しながら分析することをおすすめします。
分析のコツ②:
振り返りの場で発見した気づきは、もれなくメモをとるようにしましょう。
そして気づきを得るためにおすすめな魔法のフレーズ
「実は…なのかも」
「本当は…じゃない?」
「逆に…なのでは?」
を使いながらたくさんの意見交換をしてみてください!
分析のコツ③:
「暗黙の前提」として聞き手や相手が見落としていることなど、知らず知らずのうちに囚われている常識や価値観はないか注目してみると、潜在的にあった真の欲求が見つかるかもしれません。
最初に立てた仮説から、分析を通して
を書き出して、今回の結論と今後のアクションを考えていきましょう。
ヒアリング力を一歩前に進めよう!
ヒアリングは教わったからといってできるようになるものではありません。ご自身の体験や練習を通して身につけ、鍛えられていくものです。今回の内容を知って満足するのではなく、ぜひ同僚や友人など、身近な相手からヒアリングに挑戦してみてください!
記事を読んでくださったみなさんも、今回ご紹介したコツを何かひとつでも「試してみよう」と思っていただけたらうれしいです!
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リコーでは組織全体でデザイン思考とアジャイルを取り入れた改革に挑戦中です。noteを読んでくださっている社内外の人たちと知見を交換できると大変嬉しいです。
これからも、デザイン思考とアジャイルの実践現場から、みなさんの役に立つ情報をお届けしていきます。
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