デザイン思考の起点は”観察”!新たなインサイトを発見できる「フィールドワーク」を体験しよう
こんにちは、「みんなのデザイン思考とアジャイル」運営チームです。
私たちは「リコーアジャイル」を全社に浸透させるため、デザイン思考やアジャイルの学習&実践の場として、セミナーやワークショップイベントを定期的に開催しています。
今回は「フィールドワークシミュレーション ベトナムのマーケットをFW&リサーチしてみよう!」というイベントを開催しました。
”フィールドワーク”とは、ある調査対象について研究をする際に、そのテーマに即した場所(現地)を実際に訪れ、その対象を直接観察し、現地での史料・資料の採取を行うなど、客観的な成果を挙げるための調査技法です。
これによって潜在的な課題やニーズを発見することができます。
今回はプレゼンターの辻原さんがベトナムを訪れた時の写真を用いて、参加者の皆さんと一緒に観察しながら、フィールドワークを体験しました。
この記事では、当日の内容と併せて観察のコツや実際にフィールドワークを活用したプロダクトの開発事例などもご紹介しますので、ぜひ参考にして日々の業務に取り入れていただけると嬉しいです!
あなたの観察は十分?
はじめに、観察力を試す簡単なワークを行ってみましょう。
この動画では1カットで撮影された1分間のシーンが映されていますが、その中で21箇所の変化が起こっています。あなたは変化をどのくらい見つけられるでしょうか?
すべての変化を見つけられる方はなかなかいないかもしれません。
なぜこの観察が難しいかというと、人は見たいものしか見ていないからです。あるものを注視していると他のものは目に入りにくく、観察しているつもりでも意外とできていないことが実感できたかと思います。
「観察」の重要性
「観察」はデザイン思考にとって欠かせない重要な要素です。なぜかというと「観察」こそがデザイン思考の入り口となるからです。
デザイン思考は基本的に「観察」→「共感」→「問題発見」の順で行われ、「観察」が全ての起点となります。
また、フィールドワークにおける観察には参与観察や行動観察などの種類があり、これらの観察によってまだ発見されていない潜在的な課題・ニーズについても明らかにすることができます。
観察によって生まれたプロダクトの例
観察による潜在的なニーズの発見から生まれたプロダクトもたくさんありますので、2つの有名な例を挙げたいと思います。まずはこちら。
無印良品の「歯ブラシスタンド」です。
これは、無印良品のリサーチチームがユーザーの家でフィールドワークを行い、「歯磨きコップに歯ブラシを立てている人は多いが、実はコップは歯ブラシを立てる用途以外にあまり使われていない」という発見から生まれた商品です。
観察によって、なんとなく不衛生、嫌だなと感じていた多くの方の潜在ニーズを発見することができた事例です。
次に、TOYOTAのインド展開の際の事例をご紹介します。
TOYOTA indiaは、インドに日本車を浸透させるためにフィールドワークを行った結果、「インド圏の人は車のダッシュボードに仏像の置き物を置く人が非常に多い」ということを発見しました。そのニーズに応えるため仏像が安定して置けるように前方部分をフラットにして日本車と違いを作ったことによって、TOYOTAはインド市場の突破口を作ったと言われています。
下の写真は、私が実際にベトナムで「Grab」というライドシェアアプリを使用した際に車内を撮影したものですが、ベトナムでも同様のニーズがあることが伺えます。
観察をどのように課題解決に繋げていくか
では、これらの事例のように観察(フィールドワーク)をどのように課題解決(アイディエーション)に繋げていけば良いのでしょうか。その方法についてご紹介します。
上の図のように、フィールドワークで発見したことはアイディエーションの過程で発散と収束を行っていきます。ここで重要なのが一回で終わるのではなく繰り返すこと。さらにフィールドワークやヒアリングなどを行って情報を追加しながら、観察した結果の確実性を高めていきます。
具体的な方法としては、このようにフィールドワーク→デスクリサーチ→ヒアリングを何回も繰り返していきます。
また、フィールドワークでポイントとなるのが仮説を立てることです。仮説をもってデスクリサーチやヒアリングを行うことで、より確かなニーズや課題を導くことができます。
その際には、仮説の中に白い仮説(=立証された仮説)と黒い仮説(=立証されていない仮説)の2種類があることを認識しておきましょう。
最初に立てた仮説はまだ立証がされていない黒い仮説ですので、先ほどご紹介したサイクルを繰り返しながら白い仮説に近づけていきます。仮説を確かにしていくためには、先ほどお伝えしたように繰り返すことが重要です。
この時、情報をより確かなものにするためには「自分たちの仮説は、現在どのくらい”確からしい”のか?」と常に意識をしておくことがポイントです。
観察のコツ:フレームワークを使ってみよう
観察時のコツとしては、以下のような観察のエスのグラフィックフレームワークを活用してみてください。
以下の「AIUEO」の5つの視点をもって観察をしていくことで、より多くの発見を生み出すことができます。
観察プラクティス① 写真を観察して発見したことをあげてみる
イベントでは実際に観察の練習を行いましたので、ここからはそのワークをご紹介します。ぜひ皆さんも一緒に考えてみてください。
まず、以下のベトナムの写真を観察して、先ほどご紹介した観察のコツも活用しながら発見したことを挙げてみましょう。ちなみにこの日のベトナムの気温は26℃です。
・バイクが多い
・みんなサンダルを履いている
・暑いはずなのにダウンジャケットを着ている
・電線が雑
……など、たくさんの発見ができたと思います。
ではさらに、もう少しワークを深めるために次の質問について考えてみてください。
「ベトナムではECでの靴の購入率が低い。なぜでしょう?」
先ほどの観察で全員がサンダルを履いていることに気付いた方も多いかもしれませんが、実はそのことと関係があるのです。
ベトナムは湿度が高いためこのような通気性の高いサンダルが好まれるのですが、そのために自分の足のサイズを知らない人が多いのです。これがECで靴を買うことが少ない理由です。
このように、一見関係のなさそうな情報同士が繋がることもあるのがフィールドワークの面白さといえます。
観察プラクティス② 観察からさらに仮説を立ててみる
次に、観察からいくつかの仮説を作るフィールドワークシミュレーションを行いました。ここでは、ベトナムの文房具売り場の写真を例に挙げて、ワークの中での発見と仮説をご紹介します。
この写真の観察から、以下のような仮説を立てることができました。
このように観察と仮説はセットとして考え、観察しながら仮説を生み出していきます。今回は仮説を立てるところまでを実践しましたが、さらにその仮説を黒い仮説から白い仮説に近づけていくことで、確かな情報として様々な潜在ニーズや課題を発見することができます。
イベントを終えて
今回はフィールドワークの方法やコツをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
イベントではおそらくフィールドワークを初めて体験する方がほとんどで、
「何となくしか物事を見てない自分を発見できた」
「連想ゲームのように仮説をループさせる大切さが実感できて良かった」
などの「満足した」という感想をいただくことができました。
ぜひ皆さんも、新たなインサイトを発見する手法として、今回ご紹介したフィールドワークを日常や業務の中に取り入れてみてください!
また、他にも様々なテーマでデザイン思考とアジャイルを学習&実践するイベントを開催しておりますので、ぜひご参加いただけると嬉しいです。
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リコーでは組織全体でデザイン思考とアジャイルを取り入れた改革に挑戦中です。noteを読んでくださっている社内外の人たちと知見を交換できると大変嬉しいです。
これからも、デザイン思考とアジャイルの実践現場から、みなさんの役に立つ情報をお届けしていきます。
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