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ふりかえりに「感情」を取り入れてみたら、チームワークが深まったという話——私のアジャイル実践記

リコー みんなのデザイン思考とアジャイル

こんにちは。リコーのグループ企業であるリコーITソリューションズで、新人メンバー育成のためにOJTプログラムを実施している榎本です。

これまで私は開発者として、またプロジェクトマネージャーとして、チームで仕事をする中で、アジャイルの考え方を取り入れたり、実際に「ふりかえり」を実施したりしてきました。

そうした経験から、「ふりかえりは、個人の成長が求められるOJTのシーンでも効果的に働くのではないか?」と考え、新人メンバーの開発基礎知識を習得するOJTプログラムにも採用。しかしながら、しばらくすると、ふりかえりがうまく機能していないことが発覚したのです。

それを機に、ふりかえりをカイゼンすべく「感情」を取り入れることにチャレンジしてみました。その結果、ふりかえりはカイゼンされ、チームワークが深まるという効果を得ることができました。

今回のnoteでは、私がOJTのふりかえりに感情を取り入れた背景から、どのように取り入れ、どのような効果が出たのか、私の体験談をお伝えしていきます。

ふりかえりを実施してみてはいるものの、
・ふりかえりに対して言いしれぬつらさを感じている人
・チーム内でどこか息苦しさを感じている人
・メンバーの本音を聞けていないのではないか?と少し不安を感じているリーダー
など、ふりかえりに何か課題や違和感を感じている人の参考になれば幸いです。

感情を取り入れたふりかえりに至るまで

ふりかえり? もうやってますよ?

開発の現場に長年身を置く中で、「ふりかえり」がカイゼンのツールとして有効であることは先人の事例から知っていましたし、私自身も実際、過去に何度か実施した経験がありました。その中で、キャッチアップできていなかった課題を発見できたり、プロジェクトとして何を達成すべきか各メンバーの意識が統一される効果を体験してきました。

そうした経験から、「個人の成長が求められるOJTのシーンでも効果的に働くのでは?」と予想し、OJTの計画に「ふりかえり」を組み込み、プログラムを進めることにしました。

また、振り返りのフレームワークには「YWT」を採用しました。

Y :やったこと
W :分かったこと
T :次やること

この「YWT」というのは、日本能率協会コンサルティングによって提唱され、多くの現場でも採用されている有名なフレームワークです。

「YWT」をもとに、日報、週報、月報で報告してもらったことをそれぞれのタイミングでふりかえるというフローで進行していきました。

ふりかえりとして実施していた内容は、以下のようなイメージです。

▲ふりかえりとして実施していた内容

「物足りないです」 新人の一言から具現化された、ふりかえりの課題

ふりかえりを取り入れたOJTが始まって数か月が過ぎたころ、ある会議の場で新人メンバーから「物足りないです」という意見が上がってきました。

その理由を聞いてみると、プログラム内で計画された課題量、難易度が想像より少ないというのが要因でした。これまで使ったことのない技術やプログラミング言語を使用してもらうことを考慮し、前半の計画をゆったりめに線引きしていたのですが、これが新人メンバーの習熟度とマッチしていなかったようです。

よくよく考えてみると、報告内容に書かれている気づきや学びは、当初立てた計画に基づいて本人が実施し、言語化できたものが記載されます。計画自体が行動とマッチしていないことや、その裏にある思いまでは表出していません。私はそこをキャッチアップできていませんでした。
そんなこととは知らず「ふりかえっているのだから、日々のカイゼンはしっかりできている」と思い込んでいたことを痛感させられました。

悪いことは早く起こるもので、「物足りないです」発言があった日から数週間後、今度は新人メンバーが開発の課題に直面し、解決できないままスケジュールが大きく遅延する事態が発生しました。

プロジェクト開始から初めての大きな遅延でしたので、本人は落胆していました。私もそのリスクに気付いていながら、マネジメントできなかったことを後悔しました。

ふりかえりのカイゼンに向けて

その週のふりかえりは、お通夜のような大反省会になることは目に見えていました。多くの失敗を経験をしてきた開発者からしてみれば、ある程度の折り合い付けはできるのですが、それでも失敗と向き合うのは嫌なもの。新人メンバーであれば尚更だと思います。

この失敗を期に、私はふりかえりのカイゼンを図ることにしました。ふりかえりに「感情」を取り入れることにしたのです。
その理由としては、彼の感情変化を分解することで上辺だけではない「気づき」が得られるのではないかと考えたからです。

「ネガティブな感情は大抵複数の感情の混ざり合いである」というのを書籍から学んだことがありましたし、私としても、新人メンバーが失敗を重く受け止めすぎずに「失敗を成長に転じるマインド」を身につけて欲しいと考えていました。

これが「感情を取り入れる」に至った経緯です。

また、感情を取り入れるにあたっては、2人の先人の言葉に背中を押されました。

1人目は、ふりかえり読本の著者:森一樹さんから頂いた言葉です。

「ふりかえりがうまくいかないときは、何か手法を変えてみるとよい」

「森一樹氏‐TEAM | NRI | bit Labs」https://bit-labs.nri.co.jp/team/kazuki_mori.html

2人目は、同部署の先輩でもある山本さんの発表です。

「辛さしかないふりかえりの口当たりを良くしていった話をふりかえる」

https://speakerdeck.com/nomadmonad/xin-sasikanaihurikaerifalsekou-dang-tariwoliang-kusiteitutahua-wohurikaeru

まずはやってみよう、という気持ちでふりかえりに感情を取り入れてみることにしました。

感情を取り入れたふりかえりをやってみる

感情をアウトプットする

感情を取り入れたふりかえりを実施するにあたって、

・新人メンバーは些細な思いも書き出すこと
・トレーナーは新人メンバーの行動を非難しないこと
・トレーナーと新人メンバー、どちらもどんな感情も受け入れること
 (行動とひもづかなくてもOK)

という3つのルールを決めてふりかえりを行いました。
少しデフォルメしていますが、以下の表が感情を取り入れたふりかえりの結果です。

▲感情を取り入れたふりかえりの内容

ふりかえりに感情が入ったことで見えてきたもの

ふりかえる内容に行動とその時の感情を入れたことで、見えてきたことが大きく3つありました。

  1. 行動と感情の結びつき(タテ方向のつながり)

気づきとしては、感情を取り入れることでより鮮明に当時の出来事が再生されるということです。
「あのときこうやった結果、こう思った」「こう思ったから、次にこのような行動をとった」というように、呼び起こされる感情と行動と結びつけることで、当時の行動が思い起こされやすくなります。新人メンバー自身も、より詳しくアウトプットできるようになっていました。

2.  行動の経緯と感情の起伏の結びつき(ヨコ方向のつながり)

行動と感情を並べていくと、ふりかえり対象期間内の感情曲線(※)を描くことができます。
一般的には、ふりかえりで感情曲線を書くまではやらないのですが、新人メンバーのOJT体験そのものをよりよくしていくために、感情曲線で可視化することが役立つのではないかと考えました。また、OJTのプロジェクト=「新人メンバーの成長」であることから、新人の気持ちの変化により着目したいと考え、私の判断で描いてみました。

結果的に、感情曲線の変化するポイントにGoodポイントや改善ポイントが潜んでおり、次の行動を「いつとるべきなのか」がよくわかりました。

今回のケースでいえば、day2あたりで「ちょっと危ないかもしれない」空気が見えているので、そこで追加情報のインプット等があれば、未来は変わったかもしれません。

※感情曲線について詳しく知りたい方は以下を参考になさってください。

3. 行動した本人と行動を見ている人の結びつき(人のつながり)

以前は、トレーナーの私が、思った以上にトレーニー(新人メンバー)の行動の意味合いを理解できていないことがよくわかりました。
普段は目に見えない感情がアウトプットされることで「プラスの感情があるんだから、動作確認よりコードを書く作業に集中したいよね」「マイナスな感情があるから、調査の方向性にばらつきが見える。辛かっただろうな」と、本人の気持ちに一歩近づいて行動を見ることができたように感じます。


以上のように、ふりかえりに感情を取り入れることで、「人としての行動が、どのような思いによってもたらされたのか」をチームメンバー間(本人も含め)で共有が可能となりました。
我々のチームでは個々の「思い」に共感することで、チームワークをより強固なものにすることができたと感じています。
 
新人メンバー自身にとっては、「課題が発生した/しそうな状況」に対し、どう立ち向かうのかの大変良い経験となったようですし、指導役の私にとっても、「どのタイミングでサポートするべきか」を認識するいい機会になったな、と感じています。

感情を取り入れたふりかえりをふりかえる

感情をとりいれたふりかえりについて、もう少し考えてみます。

ふりかえりは「過去の行動を見つめ、未来につなげる」活動です。
真の原因を探るためには、過去の行動を細かく分析する必要があります。そのため、どうしてもふりかえりの進行役から行動量が多い人(今回であればトレーナーからトレーニー)へ、過去の行動を事細かにヒアリングをする必要が出てきます。

ただし、ここで行動のヒアリングだけを続けると、ヒアリングされている方は「詰問されている」という印象を受けかねません。ところがそこに感情を交えることで、ヒアリングするほうにも、されるほうにも少し柔らかさが生まれてきます。

この積み重ねによって、チームワークが醸成されていくのだなぁと、今回の経験から実感しました。

人の行動には必ず感情がついてきます。
ふりかえりに感情を取り入れることで、過去の行動がモノではなく、少し温かみを帯びた「人の」行動だったことをチームメンバーに教えてくれます。

ふりかえりにうまく感情を取り入れて、強く優しいチームを育てていきましょう!

***

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