マインドセット醸成にメイカースペースが有効!その理由とは
こんにちは、「みんなのデザイン思考とアジャイル」運営のホンミです。
私たちはデザイン思考やアジャイルの学習&実践の場として、セミナーやワークショップイベントを定期的に開催しています。
今回は「東芝のデザイン思考の取り組みと、メイカースペースに関するリコーと東芝との共同研究の紹介」というイベントを開催しました。
このイベントでは、東芝 CPS xデザイン部の緒方さん、衣斐さん、安達さんに登壇していただきました。
東芝におけるデザイン思考の取り組みと、リコーと東芝が共同で研究している「メイカースペースとマインドセットの関連」についての研究内容を発表しました。
デザイン思考は色々な企業で導入されていますが、取り組み方は様々です。この記事では、東芝のデザイン思考の取り組みと、なぜデザイン思考のマインドセット醸成にメイカースペースが有効なのかをご紹介します。
なぜ東芝にメイカースペースが誕生したのか?東芝のデザイン思考とマインドセット
特徴1:カスタマーバリューデザイン®
東芝版デザイン思考である「カスタマーバリューデザイン®」は、様々な専門家が協働してお客様と価値を共創するために、東芝が独自に体系化した手法です。
特徴的なのは「トリプルダイヤモンド」で、一般的なデザイン思考における課題発見と解決策の発散と収束のダブルダイヤモンドに、「ビジョン共有」のプロセスを追加したものになります。
特徴2:マインドセットとリテラシー
現在のカスタマーバリューデザイン®では、まずマインドセットとリテラシーから学んでもらうようにしているそうです。
以前はエンジニアの人材教育において、UXデザインに基づいて手法・行動の教育を重視していたそうですが、エンジニアに普段の業務とは異なる共創、協働の手法を教えてもすぐに結果が出ませんでした。さらには、このやり方ではダメなのでは?自分たちのやり方の方が正しいのでは?というネガティブなループに陥ってしまいました。
その反省点を踏まえ、現在ではメンバー全員が備えるべき⼼得として、プロセス全てに通底する 7つのマインドセット + 5つのリテラシーを学んでもらうようにしたそうです。
マインドセットとリテラシーは、ただ情報としてインプットするのみでは中々定着せず、普段の業務やコミュニティの中で醸成されるものです。そこで注目した場が「メイカースペース」です。
東芝のメイカースペース「Maker Space KM1」と「プロトタイプ思考」
東芝共創センター Creative Circuit®に併設されているメイカースペース「Maker Space KM1」は、デジタル工作機械でアイデアを素早く具現化し、手を動かしながら繰り返し考えるための「プロトタイプ思考」を実践できる場です。
プロトタイプ思考とは、不確実性の⾼い世の中で新しい価値を⽣み出す際の思考様式で、従来のような問題を分析して論理的に解決するだけでなく、アイデアを試し、観察とフィードバックによって探索と適応を繰り返すアプローチです。
イベントでは、メイカースペースでのプロトタイプ思考の実践例「スケールフリーネットワークブローチ」を紹介していただきました。
これは、ネットワーク上にのみ存在するSNSをリアルな世界でも繋がれるように目指したデバイスで、IoTプラットフォーム ifLink や、世界最小 Bluetooth モジュールが組み込まれています。
また、東芝ではプロトタイプ思考を実践できる人材育成プログラムも開発されています。
基礎知識の学習、アイデア発想、ハッカソン、を通じて参加者同士の共創を促しているそうです。
メイカースペースの使用とマインドセットとの関係性
デザイン思考の実践においてマインドセット、リテラシーが重要だということ、さらにその醸成のためにメイカースペースが注目されている、ということは、東芝のみならずリコーも同様です。
しかしメイカースペースを使うことで本当にマインドセットが醸成されるのかについては、定量的な調査結果が少なく、効果の程は不明なままでした。
そこで今回、リコーと東芝のメイカースペースが共同で、メイカースペースの使用とマインドセットとの関係性について調査を実施しました。
調査では、デザイン思考に必要とされているマインドセットからいくつかの項目を選定し、かつ先行研究で言及されていた自己効力感について、1936名の方を対象にアンケートを実施しました。
分析を行った結果、ほぼ全ての項目でメイカースペースを使用する頻度と正の相関があることがわかりました。
これは私にとってはちょっと意外な結果でした。メイカースペースは一般的に、”モノづくりの工作室”というイメージがあるので、「アイデアを形にするのが好きだ」といった項目は正の相関がありそうだなと予測する一方、「多様な視点を持ったチームが優れた成果を生むと信じている」等の項目は、あまり相関が無いのではないかと予測していたからです。
なぜこのような結果になったのか、使い方による差異はないのか等々、まだまだ調査中ですが、メイカースペースの使用とマインドセットは関係がある、ということが定量的に確認できました。
今後の調査結果次第で、どのような運営をすると効果的かという部分まで示唆を得られればと思っています。
イベントを終えて
イベントに参加された方からは、
といった声をいただきました。
デザイン思考を実践するには、プラクティスを覚えるだけではなく、マインドセットを醸成することが重要です。それは他の手法でも同様ですが、マインドセットの醸成は難しく時間がかかるものです。
時間がかかるマインドセットの醸成に有効になり得る場の一つとして、メイカースペースという環境を今回は紹介しました。
皆さんもぜひメイカースペースで手を動かして考える、を試してみてください!
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リコーでは組織全体でデザイン思考とアジャイルを取り入れた改革に挑戦中です。noteを読んでくださっている社内外の人たちと知見を交換できると大変嬉しいです。
これからも、デザイン思考とアジャイルの実践現場から、みなさんの役に立つ情報をお届けしていきます。
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