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メンバーもお客様も巻き込んでプロジェクトを進める、クレーン作業安全支援システムチームの「アジャイル」な信頼関係の構築方法

こんにちは、「みんなのデザイン思考とアジャイル」の運営チームの辻原です!今回は、リコーの「クレーン作業安全支援システム」を開発したチームへインタビューを実施しました。
メンバーに土木建設の知見がないなかで始まったプロジェクトでしたが、モチベーション高くチームワークを構築し、非常に早くテーマ活動が拡大している取り組みです。

今回は、新たな領域に取り組むためのチーム運営やマネジメント、開発にあたってぶつかった壁やこれからの挑戦など...様々なお話をお伺いしてきました。新規事業に取り組む様々な方のヒントになりますと幸いです。 


「クレーン作業安全支援システム」という新たな挑戦

 
ーみなさんが取り組んでいる事業についてお教えください。

 岸和田さん:私たちのチームはリコーの持つステレオカメラ技術を産業分野に展開することを検討しており、更にその中で製品をデジタルサービスへと昇華させていくことがミッションです。既存技術を土木や建設などの現場の安全性向上に活用できないか?という点からスタートしました。

土木建設業の現場では安全性向上への努力が結実し、年々事故数は減少していますが、まだまだ課題が残る領域であることは確かです。そこで、私たちの技術を活用しクレーン業務に特化し、安全性を向上させることを目指したシステム開発をスタートさせました。

参考URL:https://jp.ricoh.com/release/2022/1031_1

ーチームメンバーは土木建設業の知見をもとに集められたんでしょうか?

岸和田さん:いえ、実は皆経験がなかったんです。リコーの技術やハードウェアが他業界では活用されているとはいえ、今回の土木建設のケースは全く異なる領域です。そうした経験のない領域でどれだけスピード感をもってやれるのかというのは大きな課題の一つでした。

佃さん:私はこれまでコンシューマー向けの製品の設計や量産を担当してきましたが、コンシューマー向けとビジネス向けでは全く課題の志向性が異なります。コンシューマー向けでは不特定多数の顧客に向けた計画を行いますが、今回のようなプロジェクトはお客様の顔が見えており、お客様のお話をこまめに伺いながら課題の整合を目指していきます。知見や経験がないところからでもスタートできたのは、こうしたお客様との密なやりとりや関係性の構築があったからです。

プロジェクト推進における「壁」の乗り越えかた


ーまさに「新規性・不確実性の高い」取り組みだったんですね。

大関さん:そうですね。このプロジェクトはスピードが早くて不安な部分もありましたが、チーム全員で連携しアジャイルに進められたと思います。スプリントを回し、週半ばにバックログリファインメント、初期には毎週振り返りワーク”Fun Done Learn”もやり、週末にレビューと、頻繁に進捗報告や内容確認、コミュニケーションをしています。

私自身は「お客様の価値を向上させる」「お客様の課題を解決する」といったプロジェクトテーマへの参加経験がありました。そうした経験から、プロトタイプを通じて考える方法や現場での顧客課題発見に対するナレッジを持っていたので、新規性や不確実性が高い中でも、様々なデザイン思考のフレームワークを活用できました。
情報を整理したりチーム内での共通認識を醸成したり...そうしたフレームワークがチームの議論を健全に前に進めていくことが実感でき、大変充実したプロジェクトだと感じています。

ーアジャイルなプロジェクト推進で注意したことはありますか?

望月さん:私はRITS(リコーITソリューションズ)から参画しています。私自身はコンシューマー系WEBサービスなどを数多く手掛けてきたため、アジャイルの活用・導入には比較的慣れていた方だと思います。

私がプロジェクトの立ち上げ期に注意するのは「価値観のすり合わせ」です。アジャイルなチーム運営の手法は様々ありますが、チームでの考え方を合わせていくことが最も重要です。私たちもやはり最初は連携不足がありましたが、認識のズレもアジャイル的に合わせていきました。現在ではチームワークは非常に良くなっています。

ー チームワーク改善のコツなどはありますか?

岸和田さん:他のチームと比べ、結構いろんなツールを使ってプロジェクトを推進していると思います。たとえばDiscordとか。

望月さん:そうですね。アジャイル開発用にjira、オンラインでの情報整理やディスカッション用にMiro、オンラインコミュニケーション用にSlackやDiscord…これらのツールはアジャイルなプロジェクト運用のために提案したものがいくつかありますが、チームがこうしたツールを柔軟に採用・活用してくれるので嬉しいです(笑)。

大関さん:望月さんがDiscordに常時接続してくれているので、相談したいときに厳密なアポを取らずに話せる、という心理的安全性もチームワークの良さに繋がっていると思います。
私たちは基本オンライン・リモートの環境で仕事をしていますが、相談や雑談がしやすいオープンな環境だったので、プロジェクトの推進にこのような環境が障害になることはありませんでした。これは結構すごいことだと思います。

お客様との共創において大事なこと

ー お客様との関係性や連携はどうでしたか?

岸和田さん:先にお話しした通り、私たちに業界の経験や知見がないため、お客様との連携は必須でした。お客様の現場を訪問しインタビューさせていただいたり、作業しているところを録画させてもらい、観察して使い方を確かめたりと、デザイン思考的なアプローチで顧客価値を探索していきました。お客様の課題を解決するには、やはり密な連携や現場に対する深い理解が必要です。

佃さん:お客様の顔が見えていることで、提案に対する反応やシステムに対するフィードバックなどを直接受けることができ、大きなやりがいを感じました。同時に作り手としての面白さも随所にあり、共創プロジェクトならではの仕事ができたと感じています。

大関さん:ある程度の想定をもとに計画したものを実際お客様に使っていただくと、「違う、こっちじゃない」とフィードバックをもらうことがありました。計画上はベストでも実際の使用ではイマイチということへの気づきから、利用者の視点や視野への理解を深めていきました。
このように課題解決のためにお客様にご協力いただいたり、参与いただくことは大変貴重な機会ですし、こうした取り組みのためにお客様との良い関係性は必須だと思います。

ー どのようなところに難しさを感じましたか?

山田さん:私はこれまで車載カメラを担当してきました。これまでのプロジェクトでは「作り込んでリリース」というフローを多く経験してきました。今回アジャイルになって「どこまでやるか・どこからやらないか」というバランス感が難しかったです。つい品質を向上させたくなるというか…(笑)。
必要最低限で検証・運用するフェーズと、品質を上げていくフェーズが分かれている、という理解をしつつも「必要最低限」の線引きが難しいんです。私たちリコーはメーカーですし、社内でも品質最優先という考えはまだまだ強いのかもしれません。

岸和田さん:その点で言うと、お客様にきちんと内容を説明し、納得してもらうこと、信頼関係を築くことが重要です。社内に対しては新5000系という新規事業開発の規格があり、それをもとに説明し承認を進めていった形です。
山田さんがおっしゃるようにスピードと品質の両方を担保しながら承認をもらうのはなかなか難しい面がありますが、これも社内での関係性が重要だと感じました。ひとつひとつ責任を果たしていき信頼を獲得することは、社内でも社外でも変わらず重要なことです。

これからの挑戦について


ー 様々なお話しありがとうございました!最後に、これから挑戦していきたいことについてお聞かせください。

岸和田さん:私たちのプロジェクトテーマは、これからスケールアップしていくことが求められてきます。そのための体制の強化や必要な技術を開発していく必要があります。課題やタスクは山積みですが、チームと連携し一つずつ解決していけたらと思います。

佃さん:お客様に喜んでいただくことはもちろん、チームでも楽しんでやっていきたいですね。
このテーマプロジェクトはお客様が本当に近くにいらっしゃって、私たちの取り組みがすぐに市場にでてニュースリリースになっていく...本当にスピード感がありやりがいがあると思います。逆に自分たちの障害や課題がお客様に直接届いてしまうという環境でもありますので、緊張感があるタフな環境であることも確かです。できるだけお客様も私たちも楽しんでやっていきたいと考えています。

望月さん:これまで、情報をできるだけオープンにしていくことやチーム全員が正直ベースで話ができる環境づくりを心がけてきました。これからもそうした環境を守っていきたいです。理想としては必要な時に必要な情報にアクセスでき、間違いなく伝達できる環境をつくれたらと思います。

山田さん:お客様が近くにいてすぐに声が聞けるというのは、システムやサービスの開発においてアドバンテージであり強みです。こうしたアドバンテージや強みはより一層強化していきたいです。また、私たちが提供しているシステムは、安全な現場を支援するプロダクトとして非常にセンシティブであり同時にタフさが求められるものです。プロダクトの磨き込みにもどんどん挑戦していきたいと考えています。

大関さん:チーム全員の意思と努力により、チームは非常にほぐれており良い環境です。こうした状態を維持するには仕組みも重要ですが、個々人の強い意思が不可欠です。今後チームが拡大していく中でもこうした環境を守っていきたいと考えています。

これまでのチームの取り組みや直面してきた課題・それらの乗り越え方、さらに新規性や不確実性が高いプロジェクトで重要なこと...様々なお話を伺うことができました。

オープンなコミュニケーションをアジャイルに行っていくことで、お客様とも社内とも信頼関係を構築し、それがプロジェクトのスピードと品質を高めていくという学びになるインタビューでした。
貴重なお話をありがとうございました!みなさまの今後のご活躍も楽しみにしています。

リコーでは組織全体でデザイン思考とアジャイルを取り入れた改革に挑戦中しています。noteを読んでくださっている社内外の皆さんと知見を交換できると大変嬉しいです。

これからも、デザイン思考とアジャイルの実践現場から、みなさんの役に立つ情報をお届けしていきます。

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