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「バスに乗る」

こんにちは、リコー公式「みんなのデザイン思考とアジャイル」notePRチームです!

デザイン思考を本格的に学ぼうとすると、フレームワークなどが出てくるため、「ちょっと小難しい…」と思ってしまいがちですが、実はデザイン思考はフレームワークを使わなくても、日常生活の中で実践できます。 

今回は、誰しも一度は経験したことがあるであろう「バスに乗る」という体験を題材に、日常生活の中で取り組める「デザイン思考」をお伝えします。



バスに乗るときの「違和感」

みなさん、これまでの人生の中で一度は、「バスに乗る」という経験をされたことがあるかと思います。そんなバス乗車において「違和感を覚えた」という経験もあるのではないでしょうか。

チーム内でも、「旅行先や出張先の見知らぬ土地でバスに乗ることになったとき、『なんか緊張する』っていうのが"あるある"だよね」という話をしたことがあります。

路線バスにしろ高速バスにしろ、「バスに乗る」という経験は人生で何度もしているはずなのに、見知らぬ土地のバスに乗るとなると、ちょっと緊張してしまいます。

つまり、そこに「違和感」を感じているということなのですが、それは一体なぜなのでしょうか。


なぜ違和感がうまれるのか

チームでその違和感の理由について話してみたのですが、「バス会社によって乗り降りする時に、必要な手続きがバラバラだからなのではないか?」という話になりました。

必要な手続きというのは、たとえば、以下のことが考えられます。

  • 乗り降りするドアがどこなのか(前のドアから乗る? それとも後ろのドアから乗る?)

  • 料金体系は?(定額制? 距離性?)

  • 支払い手段は?(前払い? 後払い? 現金のみ? 電子マネー使える?)

これらは一見、大したことない違いのようにも思えますが、「提供される機能が同じ」である場合、人は無意識に「過去に経験した経験と同じもの」を求めます。ここで過去と異なる体験を強制されると、人は「強烈な違和感」を感じがちです。


じゃあ飛行機は?

少し視点を変えて、別の交通機関についても考えてみましょう。
こうした違和感を紐解く際には、あえて極端な例を考えてみると気付きを得やすいので、ここでは飛行機を取り上げてみます。

飛行機はバスとは違い、

  • 事前にチケットを購入する必要がある

  • 値段が高い

  • 移動時間も長い

  • 空港でいくつかの手続きをしなくてはいけない(チェックイン、荷物を預ける、手荷物・身体検査、国際線ならイミグレーション、など)

と、必要な手続きが多々あります。これらだけを見ると、バスに比べてハードルが高いように見えます。

間違いなく、飛行機に乗る経験が少ないうちは緊張しますよね。ところが、何回か乗ってしまえばこれらの手続きはルーチンとなってしまい、あまり深く考えなくてもこの手続きができてしまうようになります。

国外で飛行機に乗る時も基本的には一緒ですし、空港、航路、航空会社が違うからといって、この手続きは基本的に変わりません。

このように、一度慣れてしまうと、自分の中に「飛行機とはこういう手続きをして乗るものだ」という基準が構築され、この基準がどんな場合でも使えると人は違和感やストレスを感じず(※)にサービスや機能を使うことができます。

※ あくまで「ストレスを感じづらい・気付きにくい」だけで、「ストレスが全く存在しない」わけではありません。


ヤコブの法則

実はこの「自分の経験を当たり前なものとして色々なサービスや機能を使おうとする」という話は、「ヤコブの法則」といって、UXデザインにおける法則として有名なものです。

ヤコブの法則は、アプリやWebサイトのUXをデザインする際によく用いられる法則です。

ここで、ちょっとした例を挙げてみましょう。

新しいWebサービスを使っていて「使い終わったからログアウトしたいな」と思ったとき、みなさんはどのようなアクションを取るでしょうか。

別の言い方をすると、「ログアウトしたい」と思ったあなたに対して、そのWebサービスにどう振る舞ってほしいと期待するでしょうか。

多くの方はきっと「そのページ右上にある自分のアイコンやユーザー名があって、そこをクリック・タップすればログアウトボタンが出てくる」という振る舞いを期待したのではないでしょうか。

このように、「過去にたくさんのWebサイトでそうしてきた」「ログアウトという機能は同じなんだから、今回も同じ手段でログアウトできるはず」と人は考える、ということが 「ヤコブの法則」 です。


わたしたちの日常に潜む「ヤコブの法則」

ヤコブの法則をバスの例に当てはめてみると、「バスというものには何回も乗っているはずなのに、見知らぬ土地でバスに乗る時はその過去の経験を上手く使えなくなっているので違和感や緊張感を抱いてしまう」となります。

例として取り上げたバス乗車やWebデザインについてだけでなく、私たちの生活の様々なシーンにこの法則が潜んでいます。

この法則を上手く利用しているものもあるし、そうではないものもあると思います。是非みなさんも、日常に潜むヤコブの法則を探してみてください。


ちょっとした違和感に気づけるようになろう

今回は「バスに乗る」という誰でもが経験のあることを例に挙げましたが、私たちの日常にはこのような違和感が溢れています。

デザイン思考というと、格好いい名前のついたメソッドやプロセスのことのように聞こえますが、実はデザイン思考につながるものは、日常に転がっていたり、すでに実行していたりするのです。

デザイン思考を身につけていくためには、こうした身の回りのちょっとした違和感に気づくアンテナを張っておくことが重要なのではないかな、と思っています。

そして、このアンテナを育てていくことで、メソッドやプロセスの目的、意味、効果への理解が深まり、自分たちの仕事でもっと使いこなせるようになると思います。

みなさんもぜひ、日常のちょっとした「違和感」を大切にしてみてください。

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今後も、「日常でできるデザイン思考」のヒントをお届けしていきたいなと思います。

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