早く・安く・何度も失敗できる「プロトタイピング」を実践してみた
こんにちは。リコーでソフトウェアを開発している本村です。
突然ですが、皆さんは” プロトタイピング ”と聞いてどんなイメージを思い浮かべますか?
デザイン思考やアジャイルにおいて、プロトタイピングは重要な要素の1つです。しかしいざやってみようとすると
などの疑問が出てくる方も多いのではないでしょうか。
リコー社内でも、仮説検証においてプロトタイプを早く作り、早く検証することの重要性が説かれています。その一方で、プロトタイプに対して苦手意識を持つ社員も多いです。
そのため仮説検証を行う前に製品・サービスを作り込んでしまい、検証をほとんど行わない、もしくは検証を開始するまでに時間がかかってしまう、といった課題がありました。
そのような背景のもと、社内のモノづくりFabスペースである「つくる~む海老名(※)」の主催で、外部講師を招いてプロトタイピングの一連の流れを体験する社内ワークショップが開催されましたので、その内容を紹介します。
(※)つくる~む海老名とは
つくる~む海老名は、3Dプリンター・レーザーカッター・カッティングマシンなどを筆頭に各種機材や工具を取り揃えた社内のものづくりFabスペースです。手を動かしながら考える社員を増やし、イノベーションを創出できるマインドを醸成することを目指し、2020年より活動しています。
プロトタイピングワークショップの流れ
今回のプロトタイピングワークショップは2日間にわたって行われました。
Day1の前半では、まず外部講師であるプロトタイピング専門家 bridge 三富さんによる「プロトタイピング講座」、リコーの本美さんによる「デジタルファブリケーション講座」が行われました。
後半ではレゴブロックを使って、テーマに沿ったアイデアを即興的に形にするワークショップを行い、つくる〜む海老名のメンバーによるサポートのもと3DCADを使ったアイデアの3Dモデリングを行いました。
Day2は、外部講師であるbridge代表取締役 大長さんによる「インタビュー講習」を行なった後、前日のプロトタイプを用いたインタビュー実践のグループワークを行いました。インタビューでのフィードバックを参考にアイデアのブラッシュアップを経て、最後は各々が考えた製品・アイデアを発表しました。講師の方々にフィードバックをいただき、ワークショップは盛況のうちに終了しました。
このワークショップに参加してみて、プロトタイピングについて様々な学びや気付きがありました。頭でイメージしていることと実際に手を動かして気付くことは体験として大きな違いがあったので、振り返ってみたいと思います。
■ プロトタイピングは失敗を先取りできる
プロトタイピングの役割の1つに、「失敗を先取りできる」ことがあげられます。プロトタイピングによる検証を行うことで、仮説と現実のギャップにいち早く気づくことができ、結果として大きな失敗を防ぐことができます。
最近ではリコー社内でも徐々にデザイン思考やリーンな事業開発が受け入れられてきていますが、一方でまだ「失敗ができない」「失敗は許されない」といった考え方や空気が残っていると思います。
しかし、時間をかけて製品・サービスを作り込むのではなく、検証と改善を繰り返しながら少しずつ前に進んでいくことが求められるようになると、その数をどのくらいこなすかが重要になってきます、
「失敗は成功のもと」のことわざにもあるように、失敗の数だけ成功の数も増えます。失敗をしても大きな問題とならないように、失敗による損失を最小限にするためにも、小さな失敗を先取りできることがプロトタイピングの役割です。
■ 早く・安く・何度も実施する
プロトタイピングを行う際のマインドセットとして大切なことは、「早く実施する」「安く実施する」そして「何度も実践する」ことです。
実際に今回のワークショップでは、数時間~数日でプロトタイプ作成とコンセプト検証、インタビューを受けて改善といった一連の流れを体験することができました。
また3Dプリンターなどのデジタルファブリケーションの発展により、ハードウェアのプロトタイピングも早く・安く・何度も実施するハードルが下がってきていることを実感しました。
すぐに良い成果を出すことが難しいからこそ、短い期間で素早く改良を続ける必要があるということ、そしてまだこの世に存在しないような革新的な製品・サービスの可能性を確かめるには、早い段階で構想を形にしてお客様にぶつけフィードバックを得ることが大事であることを学ぶことができました。
■ 評価の背景にあるニーズや課題を捉える
今回のワークショップでは、検証の手法としてインタビューを実施しました。
プロトタイプを使ったインタビューは初めての経験だったのですが、コンセプトの説明をしながら感想や良い点/悪い点をヒアリングすると、その後は何を聞いていいのか分からず、沈黙が流れる時間がありました。
講師から「インタビューイーの評価の背景にあるニーズや課題を汲み取りましょう」というアドバイスを頂き、深掘りワードを教えていただきました。
アドバイスに沿ったインタビューを行うことで、検証したいことのポイントを押さえることができ、顧客の解像度がより高まることで、改善の方向性もハッキリと見えてくるようになりました。また、インタビューを実際にやってみると、荒っぽいプロトタイプでも問題なくヒアリングができることが新たな発見でした。
プロトタイプの種類はスケッチやペーパープロトなどがあり、忠実度が低いものから高いものまで様々です。最初から完成度を求めるのではなく、何を検証したいのか?によって、最適なプロトタイプを選ぶことが重要だと思いました。
とりあえずやってみよう!
今回のワークショップに参加して、実際に手を動かしながらコンセプトを検証することは、自分のアイデアを形にして、ビジネスにつなげることができる最初の一歩だと思いました。
プロトタイピングと聞いて、
「やって何の意味があるの?」
「ちゃんと設計をして品質を高めることが大事なのでは」
「完成度が低いものを見せるのが恥ずかしい」
「上長にやる意味を説明できないからやめておこう」
というように捉えてしまう人こそ、
とりあえずやってみよう!まずやり始めてみよう!の意識を持つことが大事ではないかと思います。
リコーは、組織全体でデザイン思考とアジャイルを取り入れた改革に挑戦中です。これからも、デザイン思考とアジャイルの実践現場から、みなさんの役に立つ情報をお届けしていきます。
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